「iPhone」取り扱い開始で楽天モバイルの道は開けるか? - ケータイ Watch

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携帯電話会社にとっての「iPhone」

 現在、国内で約半数近いシェアを占めるアップルのiPhone。ここ数年は高価格路線の影響で、一時期のような絶対的な強さは陰りを見せたものの、それでも直近の販売では全体の40%前後を占めるほどの売れ行きを示しており、各携帯電話会社にとっては、もっとも重要な商品のひとつとなっている。

 ただし、読者のみなさんもご存知の通り、iPhoneはどんな事業者でも扱える商品ではない。アップル以外には同社と正式な契約を交わした携帯電話事業者のみが販売できる。国内では2008年7月にソフトバンクが独占的に「iPhone 3G」の販売を開始したが、当初、auやNTTドコモはiPhoneを扱うことができなかった。auについては当時、CDMA方式を採用していたため、仕方のない面もあったが、NTTドコモはソフトバンクの発売から約5年間、iPhoneを扱うことができず、同社のMNP転出増に大きな影響を与えたと言われる。

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 ソフトバンクがiPhoneを独占的に扱うことができた背景には、アップルの創業者である故スティーブ・ジョブズ氏とソフトバンクグループ代表取締役会長兼社長の孫正義氏との間に、個人的なつながりがあったことも関係していると言われるが、ビジネスとしてはアップルが提示したさまざまな販売条件をソフトバンクが受け入れたことによって、実現している。条件の詳細は明らかにされていないが、販売台数だけでなく、販売方法や値引き制限、料金面での優遇施策、他機種との取り扱いの差別化など、かなり細かい条件が含まれていたという。

 その後、2011年2月に米ベライゾンがCDMA版の販売を開始したことを受け、同年10月にはこれをベースにした「iPhone 4S」をauが販売するようになり、2013年9月にはついにNTTドコモが「iPhone 5s」と「iPhone 5c」の取り扱いを開始する。それ以降は主要3社が揃って、iPhoneやiPadを扱うようになり、毎年9月、iPhoneの最新モデルの発売日には、各社の旗艦店などで恒例の販売開始イベントが催されている。

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 主要3社以外については、当初、国内でSIMフリー版のiPhoneが販売されず、SIMロック解除も提供されていなかったため、実質的に利用できなかった。そのため、一部では海外で販売されているSIMフリー版のiPhoneを個人輸入し、国内の各携帯電話会社のSIMカードを挿して、利用する動きも見られた。

 ところが、今や本誌でもおなじみのIIJ公式ブログ「てくろぐ」で、2013年9月に「IIJmioのSIMカードを挿したiPhone 5s/5cに、APN構成プロファイルを読み込ませることで、データ通信が利用できる」という情報が明らかになり、徐々に国内でもiPhoneやiPadを主要3社以外のSIMカードで利用する方法が注目を集めはじめる。

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 時を同じくして、アップルは2013年11月からSIMフリー版の「iPhone 5s」「iPhone 5c」の販売を開始。ただし、SIMカードについては各携帯電話会社と別途、契約が必要で、MVNO各社で利用する場合は、APN構成プロファイルを用意しなければならなかった。つまり、国内で販売されるSIMフリー版iPhoneは、アップルが販売する正式な商品だが、動作に欠かせない通信サービスは主要3社のみが正式対応で、MVNO各社での利用は各社が独自に対応したという扱いに過ぎなかったわけだ。

 また、2016年3月にワイモバイル、同年9月にUQモバイルで、それぞれ「iPhone 5s」の販売が開始された。当時の最新モデルは「iPhone 6s」シリーズや「iPhone 7」シリーズだったため、「iPhone 5s」は型落ちモデルだったが、それでも両ブランドがiPhoneを扱いはじめたことで、契約増を大きく後押しすることになった。ただし、両ブランドでのiPhone取り扱いは、主要3社とは別で、MVNO各社と同じように、APN構成ファイルの適用が必要だったり、最新モデルは扱えないなどの制約があった。

 これらの流れを振り返ってもわかるように、いずれの携帯電話会社やブランド、MVNO各社にとってもどういう形であれ、iPhoneを扱うこと、あるいは自社の回線で利用できるようにすることで、契約増に結び付けることができていた。特に、MNPによる移行ではiPhoneがもっとも環境を移行しやすいプラットフォームだったため、各社ともかなり熱の入った販売施策を打ち出していた。しかし、ここ数年は、こうしたiPhone偏重の扱い方に対し、否定的な意見が数多く聞かれるようになり、総務省もこうした状況を念頭に置いた政策を打ち出してきたが、その効果は限定的で、市場の流れが大きく変わるほどの結果は見られていない。