送料無料が大好きな消費者がお金を払っても良いと考える「送料無料以外の価値」とは?
市場を支配しているアマゾンが、プライム会員向けに送料無料サービスを提供しているため、消費者は全員、送料無料サービスを享受しているという印象を受けます。
多くの小売事業者にとって送料のコストは重要です。消費者が送料の支払いを嫌がることを知っているため、常に妥協点を探しています。利益目標と最終収益の予測に基づいて決断する必要がありますが、同時に、送料無料以外の価値も常に模索する必要があります。ささいなことが購入につながることがあるからです。
消費者は思ったより送料を負担している
Internet RETAILER社と市場調査のToluna社は2019年3月、969人のオンライン通販利用者を対象に送料無料に関する調査を行い、小売事業者向けにまとめました。一般的な印象に反して、消費者はオンライン注文の送料を負担することが多く、平均して注文の20%は送料を支払っています。3人に1人の消費者が「少なくとも半分の注文に送料を支払う」と回答し、10人に7人が「注文の10%以上に対して送料を支払う」と答えました。
オンラインでの注文のうち、何%に送料を支払ったか(n=969/2019年3月)※ Internet RETAILER社とToluna社の調査を元にネットショップ担当者フォーラム編集部で作成送料無料に代わる魅力的なオファー
オンライン購入に関しては、無条件の送料無料サービスが最も好まれます。64%の消費者が、「オンラインショップを選ぶ際、送料無料が2番目に重要な要素だ」と答えています。約半数は、「送料無料が最重要」と位置付けています。
もちろん無条件の送料無料サービスが好まれますが、「1,000商品は送料無料」が2番目にランクインしているのは驚きです(38%)。アマゾンに対抗するためにこの方法を利用し始めた小売事業者もいれば、無条件の送料無料サービスをする代わりにこの方法を利用している事業者もいます。
送料無料の条件として魅力的なのは?(それぞれの項目を①「最も重要」から⑥「最も重要でない」の6段階でランク付けした結果を集計/n=969/2019年3月)※ Internet RETAILER社とToluna社の調査を元にネットショップ担当者フォーラム編集部で作成『全米EC事業 トップ1000社データベース 2018年版』に掲載されている小売事業者の配送ルールも改めて見直してみました。1度きりのプロモーションで行われた送料無料サービスは、消費者の行動を変えるのに重要な役割を果たしますが、今回は除外し、年間を通してどのようなルールを設けているかを確認しました。
ウォルマートやターゲットなどの事業者は、消費者に競争力が高いことをアピールするために、1,000商品、もしくは数万商品で送料無料を展開しています。このような事業者は実店舗もあるため、オンラインで注文して店舗で受け取る場合の送料は無料です。他にも、Footlocker、Focus Camera、SpaceBound、Abt、ArtVan Furnitureなどが限られた商品を購入した場合に送料無料にするサービスを展開しています。
コンバージョンビジネスである小売事業者が、消費者に送料を強いると、注文してもらえない可能性があります。送料無料のオプションがない場合、68%の消費者は半分以上の注文をキャンセルし、91%の消費者は、送料無料サービスがない場合は注文しないと答えました。競合サイトで購入するか、送料無料が提供されるまで購入しないことになります。
マーケットプレイスで販売している事業者も同じ課題に直面しています。マーケットプレイスでも状況は同じで、送料無料がない場合、60%の消費者は「半分以上の注文をキャンセルする」と答えています。また、9%の消費者は、送料無料サービスがないECやマーケットプレイスではまったく商品を購入していませんでした。
消費者が送料を負担してでも買いたい場合とは?
しかしながら、状況次第ではオンライン通販利用者も送料にお金を払うことがわかりました。
消費者は送料にお金を払うかどうかを決める際、総コストを確認しています。個人的な状況も喜んで送料を支払うかどうかを決める大切な要素ですが、最も大切なことは、欲しい商品であれば送料を払うことが多いということです。
送料を支払っても良いと考えるのはどんな場合か(n=969/2019年3月)※ Internet RETAILER社とToluna社の調査を元にネットショップ担当者フォーラム編集部で作成消費者は送料無料のためならあらゆる選択肢を考慮する
多くの小売事業者は送料無料サービスを提供できないため、コンバージョンを上げるための他の方法も考えてきました。例えば、
などです。無料の報酬ブログラムが最も興味を持たれており、2人に1人(54%)が、「送料無料のために無料の報酬プログラムに加入したことがある」と回答し、続いて47%が「有料の会員プログラムを使って送料無料を利用したことがある」と答えました。
クレジットカードも選択肢にありますが、報酬プログラムには半数が加入した経験があるのに対し、クレジットカードに加入したのは30%に止まりました。結論として、消費者は送料無料にするために、すべての選択肢を考慮することがわかります。
送料無料にするために加入しているプログラムとその数(n=969/2019年3月)※ Internet RETAILER社とToluna社の調査を元にネットショップ担当者フォーラム編集部で作成無料の報酬プログラムは、消費者の注目を集めるようです。オンライン通販利用者の多く(54%)は、無料の報酬プログラムに加入したことがありますが、38%は1つもしくは2つのプログラムへの加入に止まっています。消費者はアマゾンに慣れているため、送料無料の特典がつく会員プログラムには喜んでお金を払うかもしれません。
有料の会員プログラムに関しては、47%が加入したことがあると答えましたが、加入しているのは1つのみです。送料無料特典を提供するクレジットカードは、無料報酬プログラムや有料会員プログラムに比べると見劣りし、加入は31%に止まっています。消費者がその企業に高い興味を持っている場合のみ、送料無料特典のためにクレジットカードに加入すると言えるでしょう。
◇◇◇オンライン通販利用者は、より安く買い物する方法を積極的に探しています。無料、有料のプログラムを検討し、送料無料になる方法を探しているのです。しかし最終的には、商品が欲しい場合は送料を負担します。