3.5インチMO最後の規格となった「GIGAMO 2.3GB」:スイートメモリーズ File070
[名称] Magneto-Optical Disk(MO Disk)、GIGAMO[種類] 光磁気ディスク[記録方法] 光強度変調方式、MSR(Magnetically induced Super Resolution、磁気超解像)方式、ランド&グルーブ記録[サイズ] 約86mm[容量] 2.3GB[登場年] 2001年頃~
連載:スイートメモリーズ
「GIGAMO 2.3GB」は、ソニーと富士通によって開発されたGIGAMOの拡張規格。最大の特徴は、従来の1.3GBから大きく容量が増えたことにあります。
3.5インチMOは、エンタープライズ向けとなる5.25インチMOの技術を使い、進化を続けてきました。容量に注目して順を追っていくと、最初に登場した128MB、ZCAVを採用した230MB、マークエッジ記録へと変更になった640MB、磁気超解像(MSR)で高密度化を可能にした1.3GB(GIGAMO)と大容量化していき、最後に登場したのがこの2.3GBのGIGAMOです。
大容量化のポイントとなったのが、1.3GBでも使われていたMSRに加え、ランド&グルーブ記録を採用したこと。
従来のMOでは、レーザーを誘導するための案内溝となるグルーブが作られており、このグルーブで挟まれたランド部分にデータを記録していました(ランド記録)。これに対してランド&グルーブ記録というのは、ランドだけでなく、グルーブにもデータを記録してしまおうという方式です。
雑に言えば、今まで道案内にしか使っていなかった溝の中にもデータを記録できるようにすれば、同じ面積でもデータ密度を高められるよね、というアイディアです。
単純に拡張できた……というわけではなく、グルーブの形状をV字からU字へと変更、クロスライトやクロストークの影響が小さくなる最適なトラックピッチの選定、MSRが使えないID部を特殊な構造にするなど、様々な工夫を凝らすことで実現されています。
このあたりの話が好きな人は、こちらの資料をどうぞ。どうやって大容量化したのかが細かく解説されています。
ということで、カートリッジを見てみましょう。
形状は従来と全く変わらず。それもそのはず、3.5インチMOは互換性の高さをウリにしていて、この2.3GBのGIGAMOに対応したドライブでも、初代の128MBが読み書きができるということが謳われていました。
10年前の規格まで対応しなくても……と思わなくもないですが、1年と経たずに互換性のない見た目ソックリな後継モデルが出てしまう某リムーバブルHDDと比べ、ユーザーに優しいのは確かでしょう。
カートリッジのシャッターを開いてディスク表面を観察してみると、ちょっと面白いことになっていました。
2.3GBのGIGAMOではID部のクロストークを避けるため、ランドとグローブへ交互にIDが書き込まれています。この並びの違いで反射方向が変わるのか、ゾーンの区切りでシマシマの帯が見えました。たまたまそう見えるだけでIDと関係ないかもしれませんが、1.3GBまでのMOでは見られないものなので、少なくともランド&グローブ記録には関係ありそうですね。
2.3GBのMOが登場した2001年11月頃は、すでにDVD-R/RWやDVD-RAM/R、DVD+RWドライブなどが登場し、競争が始まってきた頃。ドライブが6万円前後というのはそれなりに競争力がありましたが、カートリッジが1枚2000円くらいと高かったのは痛いところです。
その後、書き換え型DVDはドライブとメディアの価格が順調に下がっていったのに対し、2.3GBのMOはなかなか価格が下がらず、苦戦することになりました。
ちなみに、MOは一時期広く普及していたこともあって、今でもリサイクルショップや個人売買で入手しやすいメディアのひとつです。ただし、2.3GBだけは結構レア。1.3GBでもそれなりに入手できることを考慮すると、2.3GBはホントに普及しなかったんだなと実感します。
連載:スイートメモリーズ
参考:
3.5インチMOディスク:GIGAMO 2.3GB, 富士通GIGAMO規格を拡張、2.3GB対応に, 富士通世界初!! 2万枚のデジタルカメラ画像を保存する3.5型光磁気(MO)ディスク装置新発売, 富士通大容量2.3GBを達成した3.5型MOディスク発売, Sony