次世代の推し企業-製品を生み出す力【PR】 | 日刊工業新聞 電子版
大阪支社 業務局企画部長 河本格子
関西には経験に裏打ちされた高い技術力を武器に新たな商品やサービスを創出している企業が多くある。新規事業のタネを製品化までこぎ着け、次世代に飛躍する“推し”企業を紹介する。コロナ禍の中、製品を生み出す力と攻めの経営で変革に挑む。
抗菌・抗ウイルス繊維/新型コロナで需要急増
クラボウ独自の抗菌・抗ウイルス機能繊維加工技術「クレンゼ」の引き合いが急増している。従来クレンゼは、病院の白衣や食品工場の制服、子供服向けなどに使用されていたが、新型コロナウイルス感染拡大で使用シーンが増加。国内での引き合いは新型コロナ感染拡大以前と比べ、10倍以上に伸長している。
クレンゼマスク
クレンゼは繊維表面に広島大学の二川浩樹教授が口腔内の治療や洗浄時に使う消毒薬をベースに研究し、商品化された固定化抗菌成分「イータック」を強力に固定化できる、クラボウ独自の加工技術。イータックが固定化された繊維に細菌やウイルスが接触すると、細菌の増殖を抑制し、ウイルスの数を減少させる。
イータックは口腔内の治療や洗浄時の使用を目的とした固定化抗菌成分で、安全性が高い。また従来の加工では洗濯を繰り返すとすぐに機能が低下する一方で、クレンゼは洗濯50回後も機能が保持されるなどの特徴がある。
昨年から猛威を振るっている新型コロナウイルスの感染拡大を受け、日本繊維製品品質技術センターでクレンゼの新型コロナウイルスに対する検証試験を実施し、効果が確認されている。21年7月には新型コロナウイルスの変異株であるデルタ株やアルファ株に対する抗ウイルス効果も確認したと発表した。
クレンゼキット
繊維素材へのクレンゼ加工のほか、約4年前から学校向けに販売していたスプレーを中心とした感染症予防活動キット「クレンゼキット」を企業向けに昨年発売した。クラボウの社内試験で、1回のスプレー噴霧で効果が7日間持続することを確認済み。少ない手間で職場での予防活動が効率的に行え、事業継続に貢献する製品だ。
繊維素材へのクレンゼ加工は、カジュアル衣料や雑貨品、マスクなどの製品にも急速に広がっている。また、カーテンやカーペットをはじめクレンゼキットによる予防活動を通じて住空間全体の抗菌・抗ウイルス化も可能となる。クラボウはほかにもクレンゼ加工を生かせる分野を積極的に探求し、さらなる安全安心を提供していく構えだ。
社員の70%が技術者/ニーズを短期間で形に
社員同士の連携が強み
ユニテック(大阪府枚方市、松岡弘充社長)は、産業用装置の設計・製造を手がける。FAシステムに軸足を置き、車載部品の組み立て・検査装置や、半導体メーカー向けのチップ搬送装置(チップハンドラー)などを主力にする。全社員37人の70%が技術者で、松岡社長は「モノづくりで育った人材がそろっている」と、この技術力に胸を張る。
社員の70%を技術者が占めるのは業界でも珍しいという。専任の営業担当者を置かず、技術者が商談に当たる布陣が強みだ。構想図を描くまでの時間が短く、顧客からの難題を解く時間が確保できる。本社では機械設計、制御設計の技術者が1フロアに机を並べ、柔軟にニーズに応えるシステムを構築する。「こうして完成した機械が本当の営業マンになる」と、松岡社長は解説する。
松岡弘充社長
同社は2010年、FA関連システムの構想、設計を手がける会社として設立した。まもなく協力会社でFA装置・製造装置の生産も開始。受注が拡大する中で内製に舵を切り、15年、大阪府寝屋川市に点野工場、翌年には奈良県生駒市に生駒工場を開設して、自社の製造領域を制御装置からシステム全体に広げた。
社員の平均年齢は40歳。「10年やって一人前」という技術の世界で、30歳代半ばの一人前になった世代が主戦力になってきた。離職率の低さは松岡社長の自慢の一つだ。「機械を納品し、動くのを見ると幸せになれる」と松岡社長は魅力を語る。同社は2020年に大阪府経営合理化協会の「第3回学生に教えたい“働きがいのある企業大賞”」特別賞も受賞している。
近年は自社考案のトレーチェンジャーを展示会に出展するなど、技術提案をさらに強めている。10月には無人搬送車(AGV)を組み合わせた新たなシステムも発表する予定。今後、食品メーカー向け省力機械分野への参入を目指すほか、自社ブランドの製品展開も目標に掲げる。
「今は賃貸だが、設立20周年までに自社事務所と工場を用意したい」と、松岡社長は意気込む。
2020年に設立50周年/倉庫新設で生産拡大を目指す
三河電機(大阪府東大阪市、樽本文男社長)は、受配電設備の設計・製作を手がける。付帯電気工事や試運転調整、アフターサービスまでも事業領域に含め、一貫対応を強みに成長を続けている。2020年に設立50周年を迎え、その勢いはさらに増す。11月には本社近隣地に製品倉庫が完成予定。本社工場の効率を高め、生産を拡大する。
同社はキュービクル式高圧受電設備、高低圧配電盤、特別高圧受電設備、FAライン用制御盤などをメーンに、弱電から強電分野まで対応する。顧客は環境関連設備メーカーを中心に、電鉄会社、自動車メーカーなど幅広い。2002年には品質管理の国際規格「ISO9001」の認証を取得し、顧客満足度と品質の向上を目指して維持・改善に努めている。
樽本文男社長
樽本社長は、より女性が活躍できる職場環境の整備や人材育成の一貫として社員の資格取得を後押ししている。セミナー参加を通じた知識の吸収とスキルアップを励行しており、多数の技能試験合格者を輩出。技能士となった社員が様々な現場で活躍している。FAやシーケンサー関連はソフトウエアも社内で構築するなど、技術のアップデートによって、顧客の新たな技術ニーズに積極的に応える体制を整えている。
一方、11月完成予定の製品倉庫は同社の生産能力向上に寄与する。現在、8階建て本社ビル内の4フロアが同社の工場エリア。出荷前の製品を置く待機スペースもこの中に確保しており、以前は生産スペースが限られていた。
倉庫完成後は直ちに製品を移動し、本社工場内の滞留を解消。生産スペースを広げる。倉庫は高さ10メートル、延床面積277平方メートル。余力ができることで「生産能力を現状の2倍にしたい」と樽本社長は意気込む。
同社はケーブル線巻き取り機やハンドライトの電池保護カバーなど自社ブランドの“アイデア製品”も製品化。主力事業以外で新商品開発の取り組みも進め「会社は小さいが協力会社の強いネットワークがある。電気以外のノウハウも豊富」と樽本社長。今後も攻めの姿勢で国内外にも更に販路を拡大し、企業体質を強化しながらグローバル企業として事業を展開する。
クラボウ = https://www.kurabo.co.jp/
株式会社ユニテック = https://www.unitec-lca.co.jp/
三河電機株式会社 = https://www.mikawadenki.co.jp/
企画/制作:日刊工業新聞社大阪支社