“1万円のAlder Lake世代Pentium”で格安ゲーミングPCを作る【フォートナイト144Hz達成】
なるべく安くゲーミングPCを自作したい! ゲーマーなら誰でも思うところだ。しかし、2022年2月現在、2021年の始めから続くビデオカードの高騰は続行中。それゆえに時期が悪いという声も聞こえてきそうだが、半導体不足など複数の要因でこの状況は変わる見込みがまったくない。さらなる値上がりのウワサもあるほどだ。となれば、現在販売されているパーツでやりくりするしかない!【この記事に関する別の画像を見る】 というわけで、ここでは2022年2月現在の格安ゲーミングPC自作を考えていく。やはり“PC”である以上は、ただただ最安値パーツで固めるだけではなく、汎用性、拡張性、将来性はある程度確保したい。 やっぱり、人気ゲームをプレイできるのはもちろん、配信したり録画して編集もしたいもの。ビデオカードの性能に不満を感じたら、上位モデルに乗り換えたり、容量が不足したらストレージを追加できるほうがよいに決まっている。格安だが、それだけではないゲーミングPCに仕上げたい。 まず、ゲーミングPCの心臓部と言えるビデオカードから選びたい。実用的な性能があってなるべく安い……となると、エントリークラスのNVIDIA「GeForce GTX 1650」かAMD「Radeon RX 6500 XT」を搭載するビデオカードに絞られる。 GTX 1650は最安値クラスで2万8,000円前後、RX 6500 XTで3万円前後だ。性能的にはRX 6500 XTのほうが若干上だが、ハードウェアエンコーダを搭載していないので、配信や録画しながらのプレイには向かないと汎用性では若干落ちてしまう。そのため、今回はハードウェアエンコーダのNVENCを持つGTX 1650搭載のビデオカードを選ぶことにした。 次はCPUだ。Alder Lake世代から選びたい。これは最新世代だからという単純な理由だけではない。前世代からの性能向上が顕著であり、さらにハイエンドからエントリーまでラインナップが豊富で、対応マザーボードを購入すれば、将来的なアップグレードも行ないやすいためだ。 Alder Lake世代のエントリークラスでは、4コア8スレッドで実売1万4,500円前後のCore i3-12100Fが大人気だが、今回は実売1万500円前後で2コア4スレッドのPentium Gold G7400を選択する。 CPUの基本性能はコア数の多いCore i3-12100Fが上だが、GTX 1650搭載のビデオカードと組み合わせる場合、実ゲームではPentium Gold G7400とフレームレートはほとんど変わらない。後述するベンチマークでは、両CPUを使ってテストを行なっているので確かめてほしい。 CPUが決まれば次はマザーボードだ。Pentium Gold G7400対応で最安値を狙うならH610チップセットを搭載した製品となるが、ここではB660チップセットを採用するASRockの「B660M Pro RS」を選んだ。 大きな理由はM.2スロットにヒートシンクを搭載していること。低価格マザーはコストを抑えるため、このヒートシンクをカットすることが多い。高速なNVMe SSDを安心して使えるのは大きい。別途M.2用ヒートシンクを購入するより手間も少なくて済む。 また、B660M Pro RSをゲーミングを意識しているのかPCI Express x16スロットが強化スチールスロット仕様と、大型のビデオカードを不安なく支えられるのも強み。横向きのSATAコネクタ裏あたりがさりげなく光るのもポイントだ。 マザーボードがDDR4対応なので、CPUの定格に合わせてDDR4-3200を選択。ゲームプレイには16GBあれば十分なので、8GB×2枚セットで流通量が多く、価格も手頃なMicronの「Crucial CT2K8G4DFRA32A」とした。ヒートスプレッダのないシンプルなタイプだ。 ストレージはNVMe SSDにこだわった。PCI Express 3.0 x4接続のエントリークラスでも、SATA接続のSSDよりは高速だからだ。ゲームの大容量化が進む現在、最低でも500GBはほしいということで、Micronの「Crucial P2 CT500P2SSD8JP」を選択した。 M.2のNVMe SSDとして最安値クラスだが、それでもSATA SSDの定番Crucial MX500より最大性能もゲーム関連のベンチマークでも上回る性能を持っている。 電源ユニットはDEEPCOOLの「DP-BZ-DA600N」を選択した。600Wクラスの電源として最安値クラスだからだ。もっと出力が低く、低価格な電源も存在するが、GeForce RTX 3060の推奨電源が550W以上、GeForce RTX 3060 Tiの推奨電源が600W以上となっているため、将来的にミドルレンジクラスのビデオカードに乗り換えを考えた場合、600W以上あったほうが便利。 ただし、GeForce RTX 3060 Tiの高OCモデルなどは、推奨電源が750W以上という製品も存在するので注意が必要だ。また、DP-BZ-DA600NはCPUの補助電源ケーブルが8(4+4)ピンの1本だけ。今回使用するマザーボードは、CPUの補助電源が8ピンが1つだけなので問題ないが、ハイエンドクラスのマザーボードは8ピン×2や8ピン+4ピンという構成が多い。組み合わせるマザーボードには注意が必要だ。 最後はPCケースだ。最安値クラスはmicroATXサイズが多いが、それではどうしても拡張性が制限されてしまう。ここでは、実売価格3,500円前後と格安ながら、ATXサイズのZALMAN「T8」をチョイスした。 最大29.5cmまでのビデオカードに対応、全高16cmのCPUクーラーをサポート、前面には24cmクラスの簡易水冷クーラーも取り付け可能と幅広いパーツを利用できる。5インチベイもあり、2.5インチシャドウベイを4基、3.5インチシャドーを1基、2.5/3.5インチ共用シャドーを1基とこちらもこちらも充実。前面のコネクタにType-Cを備えていないのが唯一残念なところだ。ATXサイズなので、将来的にATXマザーの乗り換えやすいのも強み。 改めて今回のプランを表にまとめた。OSなしで実売価格は7万6,000円前後だ。 ここからは、このプランでどこまで性能が出せるのか試していく。ここで、1つだけお詫びがある。それは、機材調達の問題でテストに使うビデオカードが、メモリにGDDR6を搭載する「ZOTAC GAMING GeForce GTX 1650 OC GDDR6」ではなく、現在は流通していないメモリがGDDR5の「ZOTAC GAMING GeForce GTX 1650 OC」であることだ。GDDR6版のほうが約10%ほど性能が上回るケースが多く、ZOTAC GAMING GeForce GTX 1650 OC GDDR6を使用した場合、ここから紹介するベンチマークの結果より下回ることはないので、そこは安心していただきたい。■ 画質調整で高フレームレートもイケる! 実ゲームテスト 今回の格安ゲーミングプランで、実際の性能はどうなのか試していきたい。CPUだけをCore i3-12100Fに変更場合の結果も合わせて掲載する。CPUの選択に迷ったときの参考にしてほしい。まずは、CGレンダリングでCPUのパワーを測定する「Cinebench R23」とPCの総合的な性能を測定する「PCMark 10」から見てみよう。 Cinebench R23では2コア4スレッドのPentium Gold G7400と4コア8スレッドのCore i3-12100Fでは、パワーの差は歴然。マルチコアのテストでは、大きな差になっている。 PCMark 10もすべての項目でCore i3-12100Fが上回る。オフィス系のアプリやクリエイティブ系のアプリもよく使う、という人はCore i3-12100Fもアリだろう。 ただ、ゲーム性能ではどうだろうか。まずは定番の3DMarkから試す。 このテストでは、これまでより2つのCPUの差はグッと小さくなる。Core i3-12100Fのほうが上で、Fire Strikeで約4%、Time Spyで約8%の差だ。どちらもCPUパワーを使うテストもあるため、Core i3-12100Fが優位になるのは当然というところ。 では、実ゲームではどうだろうか。ここでは解像度をフルHDに固定し、2パターンの画質設定で比較していくことにする。まずは軽めのFPS「レインボーシックス シージ」から見ていこう。ゲーム内のベンチマーク機能を使用してフレームレートを測定している。 その差はわずかだ。Core i3-12100Fは2~3fps上回っただけで、誤差と言ってもよいレベル。これは、軽めのFPSと言えどもGeForce GTX 1650がボトルネックになって、CPUパワーの差がなくなった考えられる。 続いて、中量級のゲームとして「レインボーシックス エクストラクション」、「Apex Legends」を試す。レインボーシックス エクストラクションはゲーム内のベンチマーク機能、Apex Legendsはトレーシングモードの一定コースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで測定している。 どちらも最高画質で快適なプレイの目安である平均60fps以上をクリア。画質を中程度にまで落とせば、平均100fpsオーバーと144Hzなど高リフレッシュレートのゲーミング液晶も生かせるフレームレートを出せる。また、2つのCPUでフレームレートのほとんど差は出ていない。ここでもPentium Gold G7400で十分快適に遊べることが分かる。 続いて、まだまだ人気のTPS「フォートナイト」を試そう。ソロモードのリプレイデータを再生した際のフレームレートをCapFrameXで測定している。画質のプリセットで「最高」にした場合と、「低」にした上で粗さを軽減させるために3D解像度を100%、敵を見つけやすくするため描画距離を「遠い」に設定と競技向きの2パターンでベンチマークを実行した。 最高画質では平均60fpsに届かないが、競技向きの設定では平均170fpsオーバーとリフレッシュレートが144Hzのゲーミング液晶も存分に生かせるフレームレートを出せる。ここでは描画負荷が軽く、ビデオカードがボトルネックになりにくいのか、Core i3-12100Fのほうが若干フレームレートが上になった。 続いて、「モンスターハンターライズ」、「Call of Duty: Vanguard」、「Forza Horizon 5」を試す。「モンスターハンターライズ」は、集会所の一定コースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで測定、Call of Duty: Vanguardはキャンペーンモードで一定コースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで測定、Forza Horizon 5はゲーム内のベンチマーク機能でフレームレートを測定している。 モンスターハンターライズは、軽めのゲームなので最上位の画質である「高」でも余裕で平均60fps以上を出した。画質「中」では、ビデオカードがボトルネックになっていないようで、CPUパワーの差が思いっきり出たと見られる。ただし、ここまで大きな差が出たのは今回試したゲームの中でこれだけだ。 Call of Duty: Vanguardは描画のクオリティが高いだけに、画質「低」でようやく平均60fps以上になる。画質「通常」の設定でも平均40fps台と、このあたりでGeForce GTX 1650の限界が見えてくる。その一方で、同じく美しい描画のForza Horizon 5は画質「高」でも平均60fps以上を出せた。これはなかなかうれしいところだ。 続いて、重量級ゲームから「サイバーパンク2077」と「ダイイングライト2 ステイ ヒューマン」を用意。どちらも現在最高クラスに重たいゲームだ。サイバーパンク2077はマップの一定コースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで測定、ダイイングライト2 ステイ ヒューマンはバザールの周辺を移動した際のフレームレートをCapFrameXで測定した。 サイバーパンク2077は画質のプリセットを「低」まで落としても平均46.6fpsと何とかプレイできる程度のフレームレートしか出ない。このゲームは描画負荷軽減するアップスケーラーの1つ「DLSS」対応なのだが、GTX 1650は使えないのが痛いところ(DLSSを使うにはRTXシリーズが必要)。 なお、サイバーパンク2077は2022年2月15日の最新アップデートでGTX 1650でも使えるアップスケーラー「FSR」に対応したが、このテストはアップデート前に行なったので試せなかった。 ダイイングライト2 ステイ ヒューマンは、最初からFSRに対応しているため、画質プリセットを「低」、FSRを「クオリティ」にすれば平均60fpsをなんとか達成できる。アップスケーラーを活用すれば、最新の重量級ゲームもプレイできるのはうれしいところだろう。ただし、画質はかなり落とせなければならないが……。■ 配信しながらのゲームプレイにも対応できる GTX 1650の強みはハードウェアエンコーダのNVENCを備えていること。CPUに負荷をかけることなく動画のエンコードを行なえるので、ゲームをプレイしながらの配信や録画がしやすくなる。実際にApex LegendsをOBS StudioでYouTubeに8Mbpsで配信しながら、上記と同じ条件でベンチマークを実行してみた。 配信していないときに比べて、平均6~9fps程度の低下で済んでいる。最高画質でも平均60fps以上出ており、配信しながらのプレイもこなせることが分かる結果だ。■ 消費電力が小さく、温度も低い 最後にシステム全体の消費電力と温度をチェックしておこう。消費電力は、OS起動10分後をアイドル時とし、Cinebench R23のMulti Core実行時と3DMarkのTime Spy実行時の最大値を掲載する。電力計はラトックシステムのREX-BTWATTCH1を使用した。温度に関しては、「サイバーパンク2077」を10分間プレイしたときのCPUとGPU(ビデオカード)の温度をHWiNFO64 v7.16で追っている。 Pentium Gold G7400はPBP(これまでのTDP)が46Wと低いため、主にCPUを使用するCinebench R23では、消費電力が74.8Wと低い。CPUとGPUを両方使う3DMarkでも126Wだ。ハイエンドCPUとGPUの組み合わせでは500W超えも当たり前なので、性能が全然違うので比較にはならないが、今回のプランは消費電力的にも優しいPCになっている。 今回のCPUとGPUともに消費電力がそれほど大きくないので、発熱も小さめ。CPUは付属のリテールクーラーながら最大56℃と低く、GPUもシングルファンのシンプルなものだが、63℃に収まってる。長時間ゲームをプレイしてもまったく不安はない。■ 格安プランでもフルHD解像度ならゲームを楽しめる ここまで、安さを重視しつつ拡張性や将来性を確保したゲーミングPCの自作プランを紹介してきた。 GeForce GTX 1650は、DLSSにも対応していない2世代前のエントリーGPUだが、フルHD解像度であれば、軽めのFPSやTPSなら高フレームレートを出せるだけのパワーもあり、描画負荷の高いAAA級タイトルも画質設定の調整ややアップスケーラーを活用で、プレイできなくもない。ゲーミングPCとして最低限の性能は確保できていると言ってよいだろう。 ATXケースに600W電源なので、ミドルレンジクラスのビデオカードに乗り換えもしやすい。まずは、格安ゲーミングPCでゲームを楽しみつつ、ビデオカードの価格の動きをじっくり見ながら拡張プランを立てるのもよいのではないだろうか。
PC Watch,芹澤 正芳
最終更新:Impress Watch