Kindle/Fire HD 10 “キッズモデル”で子供が読書好きに? パパママ目線で使ってみた
Amazonの電子書籍リーダー「Kindle」とタブレット「Fire HD 10」に“キッズモデル”が登場し、10月30日から出荷開始された。一足先にこれらの端末を体験する機会を得たので、小学生と保育園児の子供を持つ編集部記者が“パパママ目線”でのレビューをお届けしたい。
Amazon KindleキッズモデルとFire HD 10キッズモデルを子持ち記者が試した■子供向けサブスクサービス「Amazon FreeTime Unlimited」を1年間無料利用可能新たに登場したのは、第10世代Kindleをベースにした「Kindle キッズモデル」と、今回同時発売された最新世代の10.1型タイプ「Fire HD 10」をベースにした「Fire HD 10 キッズモデル」。Kindleには初めてキッズモデルが登場したことになる(Fireには7型と8型にキッズタイプが先行展開されている)。キッズモデル独自の仕様として、ブルーまたはピンク(Fire HD 10ではパープルも加えた3色)の保護ケースが付属する。Fireタブレットのケースはスタンドにもなる子供向けモデルとしての大きな特徴が、ペアレンタルコントロール機能の搭載と、子供向けの定額読み放題サービス「Amazon FreeTime Unlimited」の1年利用権が付属すること。ペアレンタルコントロール機能では、保護者のPCやスマートフォンなどからアクセスできる「ペアレント・ダッシュボード」から、子供が閲覧できるコンテンツの種類や端末を使える時間などを保護者が細かに設定できる。また、子供のタブレット利用状況の確認やFire HD 10のロックなどをリモート操作することも可能だ。ペアレントダッシュボードから子供の利用状況を確認したり利用制限を設定することが可能「Amazon FreeTime Unlimited」は、岩波少年文庫/講談社青い鳥文庫といった児童書、伝記、学習まんが、科学本など1,000冊以上の子ども向け書籍が読み放題になったり、Fireタブレットでは子供向けに厳選されたアプリやウェブサイトが利用できるというサービス。通常、プライム会員は月480円、一般会員は月980円の有料サービスだが、KindleおよびFireタブレットのキッズモデル購入者は1年間無料で利用できる。Fireタブレットでは書籍に加えてアプリや動画も利用し放題ただ、今回試してみた限りでは、特に書籍に関してのコンテンツ内容は現時点では少々微妙ではないかというのが正直な感想だ。例えば子供が真っ先に食いつきそうなマンガジャンルは「ドラえもん」が何冊かあるくらいで、あとは学習マンガが中心、絵本や児童書はそもそも電子書籍化されていないものも多く(スマホアプリで“電子絵本”として展開するものもあるがオリジナルストーリーで本と同じ内容のものではないことが多い)、「おしりたんてい」「かいけつゾロリ」など人気作品を読むことができない。そのほかでは、人気絵本作家ヨシタケシンスケの作品は「りゆうがあります」1冊のみ読み放題対象となっているが、同じPHP研究所発行でも「ふまんがあります」はラインナップされていない。2018年に実施された「小学生がえらぶ!“こどもの本”総選挙」ベスト100にランクインした作品のうち、Amazon FreeTime Unlimitedで読み放題になっているのは数えるほど。実際に使う子供たちの立場で見れば「え? あれは読めないの?」となってしまうのではないだろうか。今後の作品数拡充に期待したいところだ。こうした場合、一時的にペアレンタルコントロール機能をオフにするか、PC/スマホからペアレントダッシュボードにアクセスして、親のアカウントで購入したコンテンツを子供にシェアすることが可能。PrimeリーディングやKindke Unlimitedでの読み放題作品や、単品販売されている作品をシェアできる。単品販売では「妖怪ウォッチ」など人気コミックや「なかよし」などのマンガ雑誌、「ミルキー杉山のあなたも名探偵シリーズ」を始めとする児童文学など幅広い作品がKindleストアで購入できる。なお、少し補足しておくと、小学館ジュニア文庫が読み放題対象になっており、「名探偵コナン」や「MAJOR 2nd」といった人気マンガのノベライズ版がラインナップされている。小学館文庫以外では「イナズマイレブン」の小説版なども読み放題だし、また、「ハリー・ポッター」シリーズも読み放題対象だ。小学生高学年くらいの子供であればかなり魅力的なラインナップと言えるだろう。■ペアレンタルコントロール親目線で言うと、ペアレントダッシュボードでかなり細かく使い方を制限できる点は魅力的だ。親のAmazonアカウント1つにつき子供アカウントを4つまでつくることができ、子供アカウントそれぞれ別々に制限を設定できる。「お兄ちゃんは夜9時まで使えるけど弟は7時まで。1日の使用時間も兄は3時間まで使っていいけど弟は1時間まで」といったようなことが設定可能だ。なお、子供アカウント作成の際は、名前(あだ名などでもOK)、性別、生年月日を入力。性別や年齢を判断して最適なコンテンツをレコメンドしてくるようだ。子供向けKindleのホーム画面。生年月日や性別ごとにオススメコンテンツなどが異なるようだまた、Fireタブレット向けにアプリや動画の使用/閲覧権限を個別に与えることも可能。TVerやNetflix、DAZNなどの動画アプリを使うことを子供にも許可したりできる(Kindleは電子ペーパー端末という特性上、動画閲覧などが元々できないためペアレントダッシュボードにもこれらの設定項目がない)。ウェブサイトの閲覧も子供向けにかなり配慮されている。厳選されたウェブサイトしか閲覧できないようになっているのはもちろん、リンクを辿ってそのサイトの外に出ようとしてもブロックしてくれるのだ。例えば、財務省のキッズ向けコーナーのウェブから財務省本体のサイトに行くことまではできるが、財務省サイトのメニューにあるYouTubeアイコンをタップしてもブロックされてその先には進めない、といった具合だ。そのほか、バッジ機能も面白い。1冊読み終えるごとにバッジを獲得できたり、親が設定した1日あたりの読書時間(デフォルトは30分で5分単位で増減可能)をクリアすればメダルがもらえたりする。子供をやる気にさせるために使えるナイスな機能だ。読書量によって様々なバッジを獲得可能■不満点もあるが完成度は高い全体的にKindleもFire HDもキッズモデルとしての完成度は高いが、いくつか注文をつけたい部分もある。例えばKindleキッズモデルにおける日本語の文字入力がローマ字入力のみのため、ローマ字を理解できる年齢にならないと目当ての本があっても検索で探すことができない。できればフリック入力にも対応してほしいところだ(なおFire HDはフリック入力にも対応している)。また、これはキッズモデル(Amazon FreeTime Unlimited)に限らず通常のKindleストアでも言えることだが、一覧表示の順番に法則性がなく、シリーズ物も巻数がバラバラに並んだり、シリーズ物の間にまったく別の作品が割り込んで表示されたりする。作品名や発売日などでのソート機能が欲しいところだ。ドラえもんも巻数の並びがバラバラとは言え、前述のように全体的な完成度は高く、デジタルネイティブな今の子供ならすぐに使いこなせるようになることだろう。外出先にも頻繁に持ち歩いて自分で読書をするような、ある程度の年齢になった子供には、コンパクトかつ電子ペーパーで眼にも優しいKindleキッズモデルがオススメだ。そして家での読書が中心になるなら、フルカラーの大画面で見開きも多い絵本なども見やすく、さらには動画視聴やアプリも使えるFire HDキッズモデル、といった使い分けになるだろうか。わからない語句はすぐに検索できるのも電子書籍の利点。なおキッズモデル(Amazon FreeTime Unlimited利用時)はWikipediaでは検索できないどちらの端末もペアレンタルコントロール機能をオフにすれば大人向けの通常の端末として使えるので、もし子供が飽きて使わなくなってしまったとしても使いみちはある。「子供のために」を名目に家庭内の決裁を通す、なんてこともアリなのではないだろうか。