トヨタが国内全工場の稼動を停止、我々はサイバー攻撃リスクにどう備えるべきか?
【連載】もしもAIがいてくれたら
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経産省もサイバー攻撃に注意喚起
ロシア軍によるウクライナ侵攻は、遠方での戦争だと傍観はしていられません。AIなどを駆使したサイバー攻撃の技術が高まり、これからの戦争は、戦車や飛行機などによるリアルな攻撃だけでなくサイバー攻撃が同時に行われます。サイバー攻撃では、地理的な距離は関係ありません。
日本政府が対東欧情勢への方針を発表したことにより、報復措置として、日本に対するサイバー攻撃のリスクが高まっています。関係各所には周知のことと思いますが、2月23日には、経済産業省や警視庁等から、サイバー攻撃に関する注意喚起が発出されています。(参考:経産省からの注意喚起)
電気や水道などのライフライン関係事業者、航空や鉄道など重要インフラ事業者は、サイバー攻撃の標的となる恐れが高いようです。
本記事を執筆している現在、ロシアとの関係など実態解明中とのことですが、トヨタ自動車がサイバー攻撃の影響で国内全工場の稼働を停止すると発表されています。まさに、車の部品をつくるサプライヤーがサイバー攻撃を受けた、と考えられます。
2014年にロシアがクリミアを併合した時から、戦争は大きく変わったとされています。発電所をハッキングして停電にしたり、偽ラジオ局を作ってフェイクニュースを流したり、携帯電話の基地局を乗っ取ってウクライナ全土で通じなくしたり、といったことが行われました。サイバー戦や電磁波戦を世界は目の当たりにしました。
サイバー攻撃に巻き込まれないために個人ができること7選
サイバー技術はさらに高まっていることは、この数年のAI関係の技術の進歩だけ見ても想像に難くありません。ロシアのサイバー攻撃の能力は極めて高く、ネットワークに侵入してシステムダウンさせるまで、ロシアは世界最速とされています。
昔の戦争は、軍事装備を行える国家間での戦争でしたが、今回の戦争では、ハッカー集団も参戦しているようです。有名な国際的匿名ハッカー集団「アノニマス」が、ロシアに対してサイバー攻撃をしかけたと27日発表したかと思えば、28日にはロシアを支持するハッカー集団も反撃をしかけており、まさにサイバー戦争となっています。
日本としても、戦争の新たな形に合わせた防衛が必要です。宇宙、サイバー、電磁波戦といった新たな領域を横断的に防衛する能力を構築する必要があることは以前から指摘されていました。
相手国が攻撃対象としうる重要インフラに対するサイバー攻撃を防ぐ国家レベルでの手立ても必要ですが、重要インフラと関連する様々な企業に勤める個人としても、気を付ける必要があります。いったい何ができるのか?と不安になるかもしれませんが、個人での備えは普段と基本的には変わりません。
・パスワードが単純でないかの確認をすること・本人認証を強化すること・IoT 機器など情報連携関係を把握すること・インターネットとの接続を制御する装置の脆弱性に対する対策をすること・メールの添付ファイルを不用意に開かない・URL を不用意にクリックしない・何かあれば連絡・相談を迅速に行えるように組織内に周知すること
もはやネットワークから常時つながりながら生きているといっても過言ではない私たちが、平和に思える日本で暮らしながら、サイバー攻撃に対して完璧に備えることができるのか、不安が尽きません。
坂本真樹(さかもと・まき)/国立大学法人電気通信大学副学長、同大学情報理工学研究科/人工知能先端研究センター教授。人工知能学会元理事。感性AI株式会社COO。NHKラジオ第一放送『子ども科学電話相談』のAI・ロボット担当として、人工知能などの最新研究とビジネス動向について解説している。オノマトペや五感や感性・感情といった人の言語・心理などについての文系的な現象を、理工系的観点から分析し、人工知能に搭載することが得意。著書に「坂本真樹先生が教える人工知能がほぼほぼわかる本」(オーム社)など。