世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット」を支えるVR法人HIKKY「開発メンバー」のVRへの想いとこれから
世界最大のVRイベント「バーチャルマ―ケット」を主催しているVR法人HIKKYは、世界中から100万人を超える来場者に向け、常に新しいコンテンツを生み出すべく奮闘しています。
今年も2021年8月14日~2021年8月28日にかけて「バーチャルマーケット6」の開催を控え、制作の真っ只中。そんなHIKKYを大きく支えているのが「開発メンバー」です。
彼らは人生の中でどのようなきっかけで、開発という道に歩みを進めたのか。
いかにして、VRと出逢ったのか。HIKKYでの開発を通して、どんな未来を想い描いているのか。日々の努力や苦悩にスポットをあて、お話を伺いました。
●妹尾雄大さん(活動名:妹尾雄大)
【チーフエンジニア】
大阪在住 【趣味・特技】プログラミング、読書、神社参拝、ドール
●加藤勝己さん(活動名:車軸制作所)
【配置ツール”VioRama”開発/Unity C#エンジニア】
福岡在住【趣味・特技】ゲーム(主にPlayStation、最近はSteamも)
特に好むのは「音楽が素敵/操作性が良い/シナリオが最高/
キャラのスキル等カスタムが自由/達成感がある/キャラが可愛い・渋い」ゲーム
ホラーなもの、表現が好き
●山本允葵さん(活動名:えむにわ)
【Web開発/インフラ】
東京在住【趣味・特技】誰かが幸せになること/作ること/解析・分析/アニメ/
ゲーム・インディーズゲーム/オリキャラ/自分の意志で何か作る人を応援すること
(左から、妹尾さん、加藤さん、山本さん)
(左から、アバター姿の妹尾さん、加藤さん、山本さん)
-本日はよろしくお願い致します! まずは皆さん、大阪、福岡、東京と全く違う場所に住んでいらっしゃることに驚きました。フルリモート体制で、それぞれどんなお仕事をされているのでしょうか?
【妹尾】:
私はWebブラウザで動作するバーチャルイベント向けシステム開発のチーフエンジニアをしております。
【加藤】:
バーチャルマーケット等のイベントで、出展者様に入稿していただいた入稿物を会場に設置・設営をおこなう作業を支援する「配置ツール」の開発およびツールを使用した配置作業を主に行っています。その他、Unityを用いたイベントでは、いろいろ雑用もやります!主にUnity,C#あたりを扱うエンジニアですね。
【山本】:
私は、サーバーサイド・バックエンド・Unityを使ったツールの開発など、見た目に関わらない部分を広く浅くやっています。
-そもそも皆さん、開発の道に進まれたきっかけは何だったのでしょうか?
【妹尾】:
きっかけは、幼稚園の時に読んだ漫画ですね。
40年前で、パソコンも多くない時期だったのですが、「こんにちはマイコン」(著者:すがやみつる先生)というプログラムについて紹介されている漫画を親が買ってきて、幼稚園の時にそれを読んでプログラミングというものを知りました。
漫画には、「プログラミング言語っていうのはどういうものか」ということが書いてあったんですが、更に難しいものとして無数の数字だけがずらっと羅列されたものが紹介されていて、それを見て、これをいつか自分も理解したいなぁ~って思ったんです。
それから、小学生の頃にはパソコンを買ってプログラムを書き始めました。
【加藤】:
幼稚園って、早すぎてびっくりした(笑)私も、ほぼ独学です。
もともと何かをつくることが好きで、小学3年生の時に、親にねだってVisualBasic6.0を買ってもらったのが初めてプログラムに触れた瞬間でした。
以降、「自作のゲームを作りたい」という思いで、VB,C,C++等を書籍から独学で学んできました。情報系の専門学校を出ていますが、授業内容は独学の領域を超える部分がなかったなと思っています。ただ、資格取得という意味では、大きく授業が役立ったなと思っています。
【山本】:
私は、ゲームが好きで子供のころにBASICやCやツクールなどは触っていたんですけど、地元が田舎すぎて弟以外に見せる人がいなかったんです。Webの開発技術はインターネットが普及した後、オンラインゲームのコミュニティ内で攻略情報を共有するようになってから身につけました。
(妹尾さんのご自宅の本棚には技術関連書籍がずらりと並ぶ)
―皆さん、幼稚園や小学校の頃から「独学」だったんですね!それを見て、親御さんはどんな反応でしたか!?
【妹尾】:
うちの家の教育方針なんですが、好きな事をさせてもらえる環境で、興味あるならずっとやっていても何も言われなかったんです。
幼稚園の時にその本に書いてあったパソコンっていうのが、9万円だったんですけど、子供ながらに9万円は凄く高いことを理解して、これを親に買ってもらいたいとは言えなかったですね。
そのあと、ファミコンに繋ぐと簡単なプログラミングができるハードが1万円ぐらいで登場して、その時にようやく買ってもらいました。
【山本】:
ファミリーベーシックですね、うちにもあります〜!
今の子供達だったら同じように、switchでできますよね。最近、「ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング」というものが発売になりました。時代が変わっても、任天堂はブレなくて素敵だな~って思います。
-皆さん、昔からそうやってゲームを作って遊んでいたんですね!!VRとの出逢いはいつ頃だったんでしょうか。
【妹尾】:
1990年代初頭から映画などを通じてVRに興味があったのですが、ずっと個人で手が出せるハードウェアが出なくて、2014年にOculus Rift DK2を試してみたら圧倒的な没入感に感動して、それからずっとVRアプリの開発を続けています。
【加藤】:
もともとVRやARには興味があって、中学生のときにダイノバイザーっていう結構大きくて重いHMDでFFXIを遊んだりしてました(解像度が低くて文字が読めなかったなぁ)。
あとは、単眼式のメガネに固定するタイプのHMDを趣味で使って、買ったこともありました。
転機となったのは2014年に、京都で開催されたインディーズゲームのイベント「BitSummit」で、出展されていたOculusRift DK1の車を運転するゲームでVRすごい!と感激して、帰宅してすぐに私物のAndroidタブレットと3Dプリンタを使って、自作VRゴーグルっぽいものを作って遊びました。この自作ゴーグルは前職の入社面接のときに持ち込んで好評を得たのを覚えています。
(VRで仕事をする加藤さん)
【山本】:
現在のような仕組みのVRとの出会いはOculus DK1/ 2の頃です。
立体視好きでホログラムや裸眼立体視に興味があったんです。
大学でもホログラムや立体ディスプレイをやっている研究室でしたね。
-ズバリ!皆さんが思うVRの魅力って何ですか?
【妹尾】:
なによりも没入感ですね。別の世界にいられる感覚が好きです。
【山本】:
主観的ではあるけれど、基底現実を超えるような体験ができるところです。
【加藤】:
生まれ持った外見を変えるのは大変ですが、VRで自身の姿を変えるのはやりかたさえ知っていれば誰にでもできます。性別も不問、人間である必要すらない。現実世界では個性の表現にファッションがありますが、VRの個性は無限です。お気に入りの服を着ているとき気分がいいように、「好きな姿の自分」でいればいつも最高の気分でいられるんですよね。
-VRを仕事としている中で、今感じていることを教えてください。まずは妹尾さんから。
【妹尾】:
2010年代後半のVRの盛り上がりからは一段落しましたが、それでもVRの可能性はまだまだあり、もっと新しいものを作っていきたいと考えています。
―どんな可能性があると思いますか?
【妹尾】:
今はVRとARっていうのがまだまだを分かれているところがあるんです。これがどんどん統合されていくと思うんですよね。ARグラスである程度使えるものが登場して普及していった時に、生活がどんどん変わっていくんだろうなと。そこのサービスも作りたいなと思います。
―人々の生活を作るところに未来も感じるし楽しみがあるということですね?
【妹尾】:
はい。結局、今はVRって遊ぶためのものというイメージがあると思うんですが、今後は日常的にずっと使い続けるようなツールになって欲しいんです。いわゆる、スマホとかスマートウォッチみたいな感じで、いつも身に着けて、現実の店舗もあるけど、そこの目の前にはVR/ARを使った新しい店舗も出ている生活ということですね。
【加藤】:
ポストスマホ!
【山本】:
出かけるのも面倒だし、VRで済ますか!っていうレベルになると本当にいいよね!
(開発中の妹尾さん)
-ありがとうございます。次に、加藤さん。VRを仕事としている中で、今感じていることを教えてください。
【加藤】:
新しいものや技術が大好きなので、いまハードもソフトもサービスも目覚ましいVRに仕事として携われるのは、楽しいことこの上ないですね。
開発の仕事についているのは、単純に自分のスキルセットが合致しているからですが、コードを書いたりするのも好きなのでありがたいです。
VRの今後については、妹尾さんと同じく、映画「レディ・プレイヤー1」のように、多くの人が日常的に使う技術になっていってほしいですね。
-いいですね!続いて、山本さん、VRを仕事としている中で、今感じていることを教えてください。
【山本】:
こうして開発に関わっているのは、自分の場合、たくさんの人を幸せにできる一番効率的な手段だからです。
今、2人が言っていたように、最終的に「現実」と「VR」が溶けあうのが理想だと思っています。「溶ける」というのは、VRに「潜る」っていう行為が必要なくなるぐらい、便利に、当たり前に生活になじむということです。
それを目指すゴールとするならば、そのために何を実現できるかをいつも考えています。
例えば通信の時間をあまり感じさせないサーバ。
デバイスだったら、装着感がほぼないようなVRデバイスだとか、触覚のデバイスだとか、いろんな方向で便利にできると思うんです。あとは、文字を適切に入力するようなユーザーインターフェース。(現在、VRの中でこれっていうのが存在しないんですよね)
こういうのものを、発明するっていうのもありますよね。
これらに関して、寄与できることって考えれば考えるほど無限にあるので。
それをどうやって実現するかを考えた時に、小さな進歩でも実現できると、VRをやっている人たちって物事に対するアンテナが高いので、その凄さに気づいてもらえるのではないかなと。
VR業界は、「誰が言った」よりも「何があった」の方が大事にされている感があって好きですね。
-そんな皆さんが、HIKKYで働くことの魅力って何ですか?
【妹尾】:
上下関係がほとんどなくフレンドリーに仕事が出来て、またクリエイターが集まっていることで多くの刺激を受けられることですね。
【加藤】:
わたしは現在福岡在住で、完全在宅で勤務しています。
持病としてパニック障害があり、混雑する通勤等が非常に苦手なので、現在の勤務状態は非常にありがたいです。
「仕事はできるのに、本質でない部分(通勤等の移動など)のせいで職に就けない」わたしのような者には大きな魅力です。
【山本】:
完全リモートであるところ。自分のやったことがちゃんと世に出て公言してもOKであるところ、意思決定でWhoではなくWhatと向き合うところ。
ベンチャーあるあるですが、判断が柔軟で新しい提案で良いと思ったことはすぐに取り入れるところ。驚いたのは、言い出しっぺが責任取るみたいな風潮は一切なくて、いいと思ったらすぐ仲間が手を挙げてポジティブな協力体制を作れることですね。
(HIKKYの一部メンバー)
-仕事の中で、特に好きな作業を教えてください
【妹尾】:
まだ世の中に存在していないモノを想像しながら、社内でミーティングしている時はワクワクします。詳しいことが言えないのがもどかしいですが、まだ現時点で世の中に存在しないサービスについて、こういうのを作りたい!って考えることで、実現できそうなのも見えてきてますし、それが完成した時にみんなびっくりするだろうなっていうのを想像するのが楽しいんです。
【加藤】:
わたしはプログラムコードを書くのが好きなので、プログラムで「解決すべき課題をどうやって最小限の手数でスマートに解決するか」を考えて実現するのが好きです。
【山本】:
普段はセキュリティやコストを気にしながら開発しているのですが、本当はどれだけ便利で楽しいかに知恵と工夫を注ぎ込む開発が好きですね。金庫作るよりびっくり箱作るほうが楽しいですよね!
(VRオフィスにてアバター姿で会議中のHIKKYメンバー)
ーHIKKY内で他部署を見ていて何か思うこととかありますか?
【加藤】:
全体がよく見えますね。他の部署的な人もオンラインでテキストベースのやり取りがありますし、あらゆる会議の議事録を読むことができる。
前の会社は小規模の会社でしたが、部署が違うと、もう別の畑ですよって感じになっちゃう。でも、HIKKYは部署を超えても、何をやってるか見えるし、話ができるのが嬉しいです。
【妹尾】:
僕はゲーム会社などいろいろ経験をしてきたんですが、今までと比べて思ったのは、「営業が強いな」っていうこと。成約する能力もそうですし、会社の中での力の比率も大きい。ゲーム会社だったら、開発がすごい力を持っているんですよね。開発がスケジュールに間に合わない場合は、1週間や2週間延期してほしいと言ったら、それが通る。
でも、HIKKYは営業の力が強い。でも、それはちゃんと仕事を取ってくるという力があってこそあるものなので、なかなか凄いなとびっくりしました。
【山本】:
話していても、地頭がいいですよね、営業の人たちって。HIKKYの営業は頭を使ってちゃんと仕事してる感じ。技術面でも分からないことがあったら、ちゃんと調べてから提案するみたいなことがあるのですごいなって思いますね。
―他部署の皆さんともリスペクトし合える関係っていいですね!今後チャレンジしてみたいことや、身につけたい技術はありますか?
【妹尾】:
AI分野の技術はより研究して組み込んでいきたいです。
VRだけでは足りないこともありますから。それを補完する意味でも新しい技術を取り込みたいなと思っています。VR空間内でサポート的に色々やってくれるようなAIロボットといいますか。そういうものが登場してくるだろうなと思いますね。
【加藤】:
現在は扱っているプラットフォームの関係で、少し古めのゲームエンジンバージョンを触ることが多いのですが、最新のバージョンや技術を追っていきたいです。
最近はUnreal Engineもメジャーアップデートしたので、こちらも使えるようになりたいですね。
【山本】:
属人化している部分を自動化・ツール化して、特定の人がいなくても回るような体制をつくることが当面の目標です。根本としては、働きたくないっていうか、お金にならない事をして好きなものを作って生きていきたいというのがあるんですけど(笑)好きなコンテンツをいっぱい作って生活したいけど、それでは生きていけないので、人のためになるものを作ってます(笑)
-最後に、8月に開催されるHIKKY主催・世界最大のVRイベント「バ-チャルマーケット6」の技術面での注目ポイントを教えてください。
(「バーチャルマーケット6」は2021年8月14日(土)~28日(土)まで実施される)
【妹尾】:
私は今、Webブラウザで動作するバーチャルイベント向けシステム開発をしているので、Vket6に関してはクラウド対応する部分について、MusicVketCloudやGameVketCloudの時よりもさらに描画性能が向上しているところに注目して頂きたいです。またまだ秘密ですが新しい機能が追加されているので、楽しみにしていてください。
【加藤】:
配置ツール開発担当としては、一般出展者の皆さんに、入稿期間中に随時更新される「配置状態の確認用ワールド」に注目してほしいです。会場への配置をツールによって省力化することで、これまで不可能だった頻度での確認ワールド更新が可能になりました。
と言いましたが、現在作っているとこなんで決意表明として書きました!(笑)
出展をもっと便利にしていきたいという思いが常にありますね。
【山本】:
アカウント体系を再構築中で、個人情報を守りつつ、サービスを横断的にアクセス可能になる仕組みを構築中です。バーチャルマーケット6が、その最初の適用ケースになります。まだまだあるのですが、表に出せることが少なくてもどかしいですが(笑)
どんどん使いやすくなっていくので、楽しみにしていただきたいです。