曽祖母「としょさん」への感謝漫画に 成田出身・日暮えむさん(56) 「ひぐらし日記」で夢の書籍デビュー 昭和の風景描く
「ひぐらし日記」を手にする日暮さん(左)と長男のどん太さん=成田市
小学生の頃から毎日書いている日記を題材にしたウェブ漫画が人気を集める成田市出身の日暮えむさん(56)が、少女時代からの夢だった書籍デビューを果たした。タイトルは「ひぐらし日記」。生まれ育った同市北部の農村地域を舞台に「としょさん」と呼んでいた曽祖母とのエピソードを中心に描いた日暮さんは「昭和の懐かしい風景がたくさん登場する作品になった。深い愛で私を育ててくれたとしょさんへの感謝を込めました」と語る。 日暮さんは4年前、漫画サイトで書籍と同名作品を1話ずつ配信。人気ランキングで1位になるなど自信をつけ、勤めていた会社も辞めた。現在は配信サイト「cakes」で「新ひぐらし日記」と題し、成田山新勝寺や成田空港建設など地域にまつわる思い出や祖父の戦争体験など見聞きしたことを描いている。
サイン会で掲示された「ひぐらし日記」の試し読みパネル
1894(明治27)年生まれの曽祖母、つやさんは、89歳で亡くなるまで日中働きに出ている父母と祖父母に代わって7人家族の炊事洗濯をこなし、日暮さんと2歳年下の弟を世話した。日暮さんの住む地域では、曽祖父母のことを「としょさん」と親しみを込めて呼んでいた。 日暮さんはとしょさんについて、80歳を過ぎても元気で愚痴も言わず「精神的にも肉体的にも強く優しい人だった」と振り返る。がんを患っても家族に笑顔を見せ続けたとしょさん。日暮さんは「その愛の深さや心の広さに圧倒され、としょさんの一生を私なりに描いてみようと思った」。 高校生の頃に亡くなったとしょさんの優しさに、当時は気付ききれなかったと後悔も残るといい「親の立場になり、としょさんの気持ちが分かってきた」。あふれる「ありがとう」の気持ちをテーマにした描き下ろし作品では、わがままを言って振り回しても叱らずに笑ってくれたとしょさんを表現した。 「子どもたちに与えられる安定した収入を失う」という両親の反対もあり、長年憧れていた漫画家を目指せないままでいた。それでも、子ども2人が大学を卒業し、再び夢への思いが膨らんでいった。美大を出た長男のどん太さん(28)の存在も挑戦を後押し。ノスタルジックで温かいタッチが特徴の背景画は、タブレット端末で描くのが得意などん太さんに担当してもらっている。 書籍が販売された2月上旬、成田市内で開いたサイン会には地元住民ら多くのファンが集まった。「自分の本を両親に贈りたい」という夢もかなった。日暮さんは「いつも面倒を見てくれたとしょさんが大好きだった。皆さんにも少しでも元気や勇気をお裾分けできたら」と笑う。発行は「KADOKAWA」。
最終更新:千葉日報オンライン