タリバンによる権力掌握 急激に変化しているアフガニスタンの医療現場はいま | 活動ニュース | 国境なき医師団

タリバンによる権力掌握 急激に変化しているアフガニスタンの医療現場はいま | 活動ニュース | 国境なき医師団

2021年08月31日

アフガニスタンでは今年5月以降の激しい戦闘のあと、急速な権力の交代が行われた。不安定な状況にある同国はいま、大規模な避難や国外退避、医療を含む基本的なサービスの停止などに直面している。武装勢力タリバンがほぼ全土を制圧した8月15日からの1週間、医療現場ではどのようなことが起きていたのか。国境なき医師団(MSF)の医療スタッフ2人が変化する状況を語った。

患者であふれかえる病院/ヘルマンド州ラシュカルガ

南部ヘルマンド州都ラシュカルガでは、情勢が落ち着いてきたものの、不安や先行きの不透明感が漂う。戦闘が行われていた間は外出できなかった人びとが、MSFの支援する州立ブースト病院に戻ってきた。ここ数日は戦闘や交通事故による負傷者と、呼吸器系や消化器系の患者が多く、緊急治療室は常に人であふれている。8月15~21日の1週間で3600人以上の急患があり、415人が入院した。MSFの勤務医が緊迫した病院での状況を語った。

「ブースト病院では、戦闘の負傷者を多く受け入れました。スタッフはほとんど休むことができず、患者が到着すると飛び起きて救急室に駆け込みました。私たちが病院に寝泊まりしていたのは、外がとても危険だったからです。

8月13日に戦闘が止んでからは、空爆やロケット弾、迫撃砲のすさまじい音が聞こえなくなりました。市内や周辺地域の道路交通が再開し、人びとが再び病院にやってくるようになりました。患者数は急増しています。普段の患者数は日に500人ほどですが、ここ1週間は1日700~800人以上の急患に対応しました。戦闘の収束を待っていたため、重篤な状態で運び込まれる患者もいます。 この病院にこれほど多くの患者が集まるのは、地域の診療所が人びとのニーズに対応できないことも一因でしょう。私たちは毎日200人程度、重症ではない患者に他の診療所を紹介していますが、多くの方が『必要な薬がなかった』『人手不足で閉まっていた』と言って戻ってきます。往来が再開し、郊外から来院する人が多いことも挙げられます。

病院はすでに満床で、これ以上の患者を受け入れることができません。ベッド数よりも多い300人以上が、いま入院しているのです。救急患者が増えるほど、院内のスペース確保が問題となり、患者は長時間待たされることになります。小児科病棟では1つのベッドに2人の子どもを寝かせることもありますが、それでも足りません。そこで、重症度によって入院を必要とするかを評価することにしました。

患者のうち、1日で80~100人ほどが入院治療を要する重症患者です。その病床を確保するには、重篤ではない他の患者を退院させたり、入院期間を短縮したりしなければなりません。これが大きな課題で、長期的な解決策は見えていません」

不安を抱える妊婦をサポート/ホースト州ホースト

南東部ホースト州で、MSFはホースト市にある産科病院を運営するほか、農村部で8つの総合保健所を支援。8月15~22日の間に、MSF産科病院は402人の妊婦を受け入れ、338人の出産を介助した。この病院で働く医師が現状を語った。

「ホーストでは他の地域で起きたような激しい戦闘がなかったにせよ、厳しい状況にあります。市場や交通機関、多くの診療所が閉鎖され、医療へのアクセスが非常に難しくなっています。また、民間の診療所で出産すると3000~5000アフガニ(約4119~6865円)ほどの費用がかかり、さらなる家計の負担となります。

MSFは無償で医療を提供しているため、多くの妊婦がこの産科病院を訪れます。妊娠中の女性は、特に大きな不安を抱えています。 私たちの病院ではこれまで、合併症をもつ妊婦に重点を置いていました。しかし地域住民の医療アクセスが困難となっている現在、入院基準を広げ、あらゆる妊婦を対象に医療ケアを行っています。 連携している現地の団体からは、遠隔地の住民がなかなか医療を受けられないと聞いています。輸送システムが完全には復旧しておらず、命を救う医薬品の供給網が途切れることも懸念しています。 困難は続きますが、MSFは医療活動を継続し、戦闘の被害を受けた地域の母子の医療ニーズに応えることに注力しています」

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