運用自動化は実作業の効率化だけでは不十分、インフラ管理の理想像とその実現方法とは?――レッドハット・岡野氏
インフラ管理の効率化・自動化は必須
IT管理者が不足する環境では、本来人が行わなくても良いインフラ管理の作業を、自動化などの手段で効率化するのが必須。これに異論はないだろう。ただ、「自動化」を「単なるツールへの置き換え」と考えてしまうと、なかなか効果が上がらない可能性がある。レッドハットではこれを、自動化1.0と自動化2.0という言葉で整理する。
自動化以前:全ての作業を人が行う世界 自動化1.0:人の作業をツールで補助している世界 自動化2.0:運用がサービス化された世界
自動化1.0と2.0の世界を自動車の製造ラインに例えてみよう。職人の作業を「ドライバー」から「電動ドライバー」に置き換えることにより効率化するのが自動化1.0、作業そのものがサービス化され、誰でもスイッチを押せばロボットアームが動き出し、車ができあがるのが自動化2.0だ。
自動化1.0と2.0これをインフラ管理に置き換えると、サーバー、ストレージ、ネットワーク、アプリケーション、仮想化、クラウドなど、それぞれの技術者が、おのおのの作業をスクリプトやベンダー固有のツールなどで自動化して効率化している世界が自動化1.0。レッドハットが考える理想的な運用の世界とは、「インフラ運用がサービス化され、かつ高度にインテグレーションされた世界。このような世界では、職人さんはもはや『そこ』にはいません。使いたい人が使いたい時にボタンを押せば、職人さんが作った素晴らしい運用サービスが自動的に動き出し、安全・正確・迅速に作業が行われるような状態」このような世界を我々は自動化2.0と呼んでいます(岡野氏)。
自動化2.0の工場では、製造ラインに人はいない。ただし職人さんが不要になったというわけではない。職人さんは、現場で作業を行うのではなく、サービスを開発する仕事、自動車の製造ラインで言うとロボットアームのプログラミングをする仕事に変わっていくということだ。
冒頭でIT運用の自動化は必須と申し上げたが、実は企業におけるIT運用の自動化は遅々として進んでいない。レッドハットが実施したITの運用者に対するワークショップでのアンケートによると、自動化の適応比率が半分以下という回答が8割を超え、作業全体における自動化の比率は35%とここ数年ほぼ増えていない。この大きな理由のひとつは、自動化のポイントを見誤っていることにある。
インフラ作業の自動化というと、「実作業」の効率化がまず思い浮かぶと思うが、実はその前後に必ず何かしらの「調整業務」が発生している。例えば、入力されたパラメーターシートから作業内容を作成したり、その作業内容を説明するための資料を作ったり、関係者を集めてレビューしたり、作業する人のスケジュール調整を行ったり、作業後は報告書を作ったり、つまり人と人とのコミュニケーションにまつわる作業が「調整業務」だ。十数年前のような比較的シンプルなシステムであれば、インフラ作業全体における実作業部分が比較的多いので、そこにフォーカスした自動化であってもそれなりに効果は出た。ただ現在、我々の周りにあるシステムは仮想化やクラウドなどが複雑に絡み合い、かつ大規模化し、関係者も多くなった結果、実作業よりもその前後の調整業務の比率、つまり人と人とのコミュニケーションにまつわる作業の比率が圧倒的に大きくなっている。このため、ITの自動化と言って誰しもがパッと思い浮かぶ、実作業の部分だけを効率化しても、全体の効率化にはつながらない。このため、PoCを実施したものの効果が良く分からず、自動化の実装に踏み切れない企業が多いのだ。
現代システム構築・運用の課題ではどうすれば良いか。コミュニケーションコストの大きい現代のインフラ管理において効果を出すためのポイントとして、レッドハットでは以下の3点を挙げている。
ポイント1:自動化の標準化 ポイント2:自動化のサービス化 ポイント3:インフラCI化
自動化で効果を出すための3つのポイント以下に、それぞれについて解説する。