『レインボーシックス エクストラクション』開発者インタビュー。「進むか否か、プレイヤーに意思決定のおもしろさを」
ユービーアイソフトより2022年1月20日に発売予定のPS5、PS4、Xbox Series X|S、Xbox One、PC向けCo-opシューター『レインボーシックス エクストラクション』(以下、『エクストラクション』)。
広告本作は、ひとり~3人のスクワッドでプレイするPvEタイプの FPS。同社のタクティカルシューター『レインボーシックス シージ』(以下、『シージ』)のオペレーターが本作にも登場し、彼らを操作して地球外生命体“アーキエン”が蔓延る“サブゾーン”でさまざまな目標の達成を目指していく。
そんな本作の開発者に、こだわりのポイントや独自のゲーム性、本作に込められたチャレンジなどについて訊いた。
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レベルデザイン ディレクター
Amélie Sorel
アソシエイト アート ディレクター
――本作でおふたりがとくにこだわったポイントはどこですか?
Marcゲームの舞台やマップは重要なところですが、こだわったのは戦略性とリスクリワードです。プレイヤーがチームとしてどこまで探索を進める意志があるかどうかです。このまま進むのかやめるのか、リスクをさらに負うのか、もしかしたら無駄にオペレーターを危険に晒しているかも……など、メンバーと意思の疎通を図っていろいろと考えなくてはなりません。“エクストラクション(抽出・抜き出すこと)”という名の通り、こうした意思決定がゲームをおもしろくするのです。
Amélie本作では、チームメイトと侵入・探索を行うあいだに発見できるものがたくさんあります。情報を収集し、サンプルをTHERMITEやMIRA、ASHといった仲間に届けます。THERMITEたちはプレイヤーであるオペレーターをサポートし、アーキエンの脅威に対抗するためのガジェットを開発します。リスクは大きくなりますが、探索を進めていろいろなものを発見し持ち帰ることは、この先さらにきびしくなる戦いのために大いに役立つでしょう
Marc「銃だけでは十分でない」というのはよく使うフレーズです。探索し、時間をかけて正しい決断をすることは、弾丸を1発命中させるより価値のあるものになります。
――本作では「“ホラー”ではなく“テンション(緊張感)”を作りたかった」と以前にお聞きしました。レベルデザイン、アートの観点から、どのような“テンション”を目指しましたか?
Marcマップと全体の雰囲気などすべてに工夫を凝らしています。プレイヤーが時間をかけて探索し、見つけ難いところに隠れているエネミーも発見できるようにするため、プレイヤーの動きを遅くしています。このゲームの核は“リスク”です。リスクがなければテンションは生まれません。作戦をきちんと遂行せずに突き進めば、オペレーターを失うことになります。時間をかけ、しっかり観察してチームとしてできるだけ効率よく行動するかが重要です。そうしなければ、大きな代償を払うことになります。
Amélieアート面では、プレイヤーの進む道をガイドする照明が重要でした。黄色に明るく光っているところはオペレーターにとって安全な場所です。黄色い光が見えれば安全だと確認でき、これによってテンションが軽減されます。エネミーの数が多くストレスを感じても黄色い光が見えれば「あそこまでは行ける」と思えるでしょう。タフな状況でもいったんリラックスして、それまでの道のりを振り返ることができる場所でもあります。
――レベルデザインやエネミーのアートで、苦労した点はありますか?
Amélieエネミーであるアーキエンを作り出すのはたいへんでした。危険で不気味な雰囲気を持ち、ミステリアスですがホラーではなく、恐怖を与えて、同時に人を虜にするようなところもあります。不可思議でどこかで見たことのあるような姿。プレイヤーはそこにとどまってじっくり見たいと思うかもしれませんが、攻撃される危険が伴います。プレイヤーが私たちのクリエーションの細部まで見たいと思うかも……と想像するのは楽しかったです。
Marcもっとも苦労したのは難易度とテンション、そして戦略性のバランスを見つけることでした。プレイヤーにはステルスの感覚を持ってほしいが、あまりに障害が大きいと諦めてしまいます。そうではなく、ギリギリでがんばれる適度なチャレンジを提供するための落としどころを見つけなくてはいけません。このスイートスポットを見出すまで長い時間がかかり、現在も細かい調整をしています。プレイヤーが実際にプレイしてどんな印象を持ち、そこからどう進化していくのか楽しみです。
――実際にどのような難易度調整を行ったのでしょうか?
Marc各マップには選択可能な4つの難易度を設けています。上の難易度では、先へ進むとリソースが少なくなり、エネミーは徐々に強くなって探索はきびしいものなります。『シージ』のようなPvP(競技)環境では、プレイヤーは難度の高い、最高の経験を求めています。そこで私たちは、本作に“メイルストロム・プロトコル”というウィークリー・チャレンジの高難度モードを導入しました。このモードでは9つのサブマップが続きます。通常は3つなのでこれは非常に難度が高いです。最後まで到達できればランキングが上がり、特別な報酬がもらえます。でも、本当に難しいです! クリアーした人は、無条件に自慢する権利を甘受できるでしょう。
――ゲーム性やグラフィックについて、リアル寄りにするか、SF寄りにするか、もっと言えばファンタジー寄りにするのか、開発チームではどのようにバランスを取りましたか?
Amélieオペレーターが所属する組織、REACTについて考えている際に重要だったのは、しっかりと地についたものにすることでした。サイエンスフィクションではなく、実際のサイエンスです。ガジェットのようなオブジェクトはすべてが実際に機能します。デザインする時に何度も検討し、コンセプトアーティストとも話し合いました。現実の世界で作られたものをどのように取り入れてゲームの中で機能させるかを考えるわけです。プレイヤーはこうしたガジェットを見たときに、メカニックにもとづいて作られ、きちんと機能することがわかるはずです。
Marcこのゲームのルーツに忠実であることも重要でした。本作はPvPゲームである『シージ』から生まれたものです。操作性についても、コントローラやキーボードの使いかたなど、ルーツに沿った経験でなければなりません。クオリティーやプレイの快適さについても同じです。PvPである『シージ』をプレイしてきた人がPvEのタクティカル環境のこのゲームをプレイしても違和感がないと思いますし、そう感じてもらえればうれしいです。
――チーム内で共有している事項で重要だったことは何でしょうか?
Amélieアート担当にはすばらしい才能ある人たちが大勢います。ディレクターは全員、チームがお互いに刺激し合い、意見を交換することはとても重要だと理解しています。気持ちが入っていなければ何かをデザインすることはできません。すぐれたアイデアを持った才能ある人たちといっしょに仕事ができたことに感謝しています。アイデアがすばらしいものであれば、誰が出したものなのかは関係なく、そこから構築していくことができます。私はビジョンを提供し、指揮をとっていくだけです。チームのクリエイティブなエネルギーはすばらしいと思っています。
Marc私たちが共有したのは、戦略性とテンション。そしてゲームプレイの視点、アートの視点からも、すべてが一体になってまとまりのある商品を作るというビジョンであり、それにもとづいて仕事をすることでした。これは時間がかかりますし、簡単なことではありませんが、集合的にビジョンを持つために努力しました。このゲームはその努力の結晶ですので、できる限り磨きをかけていきます。
――これまでのUbisoftのタイトルと比べると異色の世界観ですが、本作ではどんなチャレンジがありましたか?
Marcマップ構築の方法や、アートがまとまりを持って展開されるところなど、私たちにしか作れないユニークなレシピがあります。オペレーターたちには『シージ』というルーツがあります。そのうえで、リプレイアブルでユニーク、かつ多数の選択肢がある探索、オペレーター間のシナジーなど、作り込まれた経験を提供しなくてはいけないことはチャレンジであり、最初からわかっていたことでした。こうした課題は私たちがどのようなマップを作るべきかを明確に定義づけてくれました。マップは『シージ』とは違いますし、規模も大きくなっています。オブジェクトの破壊など、キーとなる柱は同じですが、私たちなりのユニークなやりかたで作っています。
Amélieマップと同じようにアート面でも規模が大きくなっています。既存のオペレーターたちの存在に加えて、未知の生命体という新たなレイヤーが上乗せされ、ゲームをユニークなものにしています。エコシステム全体がそのようにデザインされているのです。プロシージャル生成された地面から壁を覆うドロドロまで、ゲームにテンションを加える要素のひとつです。
――参考にしたゲームや作品などはありますか?
Amélieいろいろなところから刺激を受けています。映画はいつもすばらしいインスピレーションを提供してくれます。照明によるムード作りや、不安感を与えるような演出、すぐれたデザインのクリチャーなど……さまざまな作品に触発されています。
Marcすぐれた作品はたくさんありますし、ゲーム、デザインでもそうです。もちろん私たちは『シージ』本編からも『シージ』のアウトブレイク(※本作のベースになった期間限定イベント)からも刺激をもらいました。協力プレイのジャンルでは、いろいろなゲームをプレイして大いに惹かれましたし楽しかったです。ここ数年プレイしたゲームは……数が多すぎて言えません(笑)。