ついに発売「PCエンジン mini」 現役当時のPCエンジンを知るライターが徹夜で遊び倒した(山谷剛史):2020ガジェットレビュー

ついに発売「PCエンジン mini」 現役当時のPCエンジンを知るライターが徹夜で遊び倒した(山谷剛史):2020ガジェットレビュー

そろそろ2020年も終盤戦。今年もたくさんのガジェットが発表され、弊誌にてレビュー記事が掲載されました。そんな記事のなかでも、著者や編集部がイチオシと考える製品をピックアップしてもう一度お届け致します。

これは2020年3月27日に掲載された記事の再掲載です。記事中に登場する価格や機能、画像などは当時のもので、現在は異なる可能性があります。

「大竹まこと不在のただいま!PCランド」「レトロゲーム移植の職人集団エムツーに将来老人ホームを運営させるべき」── PCエンジンminiの痒い所に手が届く再現に驚き、興奮しながら徹夜でプレイし、その中で書いた無数のメモの一部だ。つまり大満足だった。先に言えば、僕のようなヘビーユーザーにも勧められるし、これからレトロゲームを遊びたい人にもすごく勧められる。

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僕は小学校高学年から大学生まで、他のゲームハードはそこそこにPCエンジンの新作ソフトをメインに購入し遊び倒した。その辺りの追憶は「祝PCエンジン mini発売決定、当時現役で遊び倒したライターが「PCエンジン」を回顧する」を読んでほしい。当然ながら箱や本体の見た目は本家によく似ている。メガドラミニやミニスーパーファミコンは記憶が薄くてもわかりやすく小型化されたが、PCエンジン miniは実物を触っていても「一回り小さいな?」程度に小ぶりになった程度だ。

▲本体裏面。表記が異なるほか、ねじも特殊タイプがら普通のものに

▲インテリアとしてCD-ROM2ドライブを活用できそうだ

背面には本家にはない電源用microUSBやHDMIコネクターが用意されている。ついでにイヤホンジャックを用意してほしかった。この理由は後述する。パッドのボタンの押下感は本家そのものだ。これだけでもおおむね遊べるが、より楽に遊ぶために、誰かと遊ぶ時の接客用に、ターボパッドも買っておくのがベターだ。本体を見てあれっと思ったのが、PCエンジンにはあったNECのロゴがなくなっていること。PCエンジンの本体左上に刻印されていたNECのロゴが、PCエンジン miniではなくなっているのだ。PCエンジンはNEC-HE(日本電気ホームエレクトロニクス)から発売されたが、共同開発したハドソンをコナミが子会社化し、そのコナミが発売しているので......という事情はわかるものの寂しさはある。

▲パッド(コントローラー)。NECロゴがないことだけが異なる

本体の再現度で笑みがこぼれてしまうのが、メニュー画面で、PCエンジンと北米版TurboGrafx-16(TG16)のゲームが一覧から選べるのだが、ゲームパッケージの正面だけでなく側面も表示してくれるところが嬉しい。PCエンジンのソフトはほとんどがCDのパッケージサイズで、CDラックなどに縦に並べて収納した人も多いだろうから、パッケージの側面の記憶が結構あるのだ。TG16を所有したことはないけれど、きっと所有したらこんな感じになるんだろうなという気にもさせてくれる。

▲TurboGrafix-CDの起動画面も拝める

Huカードを選べばHuカードが挿入される演出があるし、CD-ROM2(シーディーロムロム)のゲームを選べば、本来のPCエンジンでCD-ROM2を遊ぶために必要なシステムカードを挿して、システムカードを起動した画面から表示される演出もある。

▲芸が細かくニヤリとさせられるメニュー画面

エムツーの移植の定番といえる画面の設定変更は縦横比にとどまらず、携帯ゲーム機のPCエンジンGTで疑似プレイが可能に。PCエンジンGT画面でアーケードカード専用CD-ROM2のゲームを遊ぶとか、多人数ボンバーマンを遊ぶといった、ありえないことが再現されているのは、それはそれで個人的にはたまらない。これまたエムツーの細かすぎる物真似なのだが、CD-ROM2を起動すると、実機でよく聞こえるCDの回転音をわざわざ音として出してくれるのが嬉しい。記憶を蘇らせてくれてエムツーさん、ありがとう(笑)。

▲CD-ROM2タイトルを起動するとCDの回転音が響く

▲海外版GT「TurboExpress」でCD-ROM2のイースを遊ぶなんてこともできる

不満は全くないけど敢えてあら探しをするなら、『大魔界村』や『オルディネス』といったスーパーグラフィックス(SG)専用ソフトを遊ぶときに、画面上ではPCエンジンやコアグラフィックスに挿してしまう演出だとか、Huカードの端子部の黒い面積がゲームのROMサイズによって違うとか、そういった部分には最初は違和感があった。でも不満はないですよ?

▲カードの挿入ギミックはいい。SGに挿入する表現だったらよりよかった


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改めて振り返るPCエンジンの名作たち

PCエンジンが名機なのはソフトが充実しているからこそ。PCエンジン miniと触れてみて改めてソフトラインアップを考えた。PCエンジンのイメージは人によって随分違う。アクションゲーム(ACT)、シューティングゲーム(STG)が充実し、さらにボンバーマンをはじめとしてみんなでわいわい遊ぶゲーム機と思う人もいれば、ギャルゲーマシンと思う人もいる。PCエンジン miniの収録タイトルは前者寄りの構成である。言わずもがなPCエンジン miniに入ってる『天外魔境Ⅱ』『ときめきメモリアル』『スナッチャー』『イースⅠ・Ⅱ』『悪魔城ドラキュラX』あたりは、PCエンジン mini購入者ならだれもが知る名作だし、『スーパー桃太郎電鉄II』『ボンバーマン( '93/'94)』『モトローダー』『ダンジョンエクスプローラー』などは皆でわいわい遊べるゲームだ。それも書いているときりがないのでそれ以外のタイトルについて思うことを書いていきたい。

▲『ときめきメモリアル』はロード時間が抑えられ当時より気軽にプレイできる

PCエンジンは良質なSTGが多い。でもってPCエンジン miniでも結構いいSTGを集めてる。シューティングはマニュアル不要で気軽に遊べるのが持ち味だが、逆にそれでネタが尽きてが近年というかここ10年以上、STGはタイトル不足が続いている。ことPCエンジン miniについてはゲームの原点たるシューティングゲーム、それにアクションゲームが揃っている。これはメガドラミニやミニスーパーファミコンとも違う、PCエンジン miniならではの良さだと思う。まず横STG御三家の『グラディウス・グラディウスⅡ』『R-TYPE(アール・タイプ)』『スーパーダライアス』が揃っている。さらに『ファンタジーゾーン』まである。でもってグラディウスやファンタジーゾーンではPCエンジン miniでリメイクモードが新たに用意されているのだ。

▲三大横STGのひとつ『R-TYPE』TG16版。PCエンジン版では前後編に分けられたタイトルが通しで遊べる

縦STGのスコアアタック系もできるソフトは、『ブレイジングレーザーズ(TG16向けガンヘッド)』『スーパースターソルジャー』『精霊戦士スプリガン』『ソルジャーブレイド』『STARパロジャー』がある。このうち『ブレイジングレーザーズ(ガンヘッド)』『精霊戦士スプリガン』が良質STGを量産するコンパイルが開発したソフトだ。さらに同社が開発した横STGの『スプリガンmark2』もPCエンジン miniに入っている。『ウィンズオブサンダー(TG16版LOADS OF THUNDER)』『銀河婦警伝説サファイア』も素晴らしい。

▲『ブレイジングレイザーズ(ガンヘッド)』。キャラバンはガンヘッドの裏技で面セレから3面をプレイだ

▲『銀河婦警伝説サファイア』。次世代機に負けじと8bitマシンの限界に挑戦した縦STG。その演出をぜひ見てほしい

聴いて楽しめるゲームも充実

PCエンジンの特徴は、内蔵音源はさておきCDを使った音楽の出来がよいことだ。例えば『悪魔城ドラキュラX』の音楽は、ニコニコ動画の音楽比較動画を見ても、悪魔城ドラキュラシリーズの中で特に評価が高いように見える。『イースⅠ・Ⅱ』をはじめとしたイースシリーズも音楽が素晴らしい(未採用の『イースⅢ』は特に近年まで他機種を圧倒した。気になった人はイースⅢの音楽比較コンテンツを見てほしい)。音楽で目立ったタイトルでは前述の『ウィンズオブサンダー』『銀河婦警伝説サファイア』ほか『超兄貴』も聴いて楽しめるゲームだ。音楽がPCエンジン以降のゲーム機より力が入ってていいものが多いので、そういった意味でもPCエンジンは不思議というかオーパーツというか不思議なハードであり、PCエンジン miniは買いである。音楽を楽しむためにもイヤホンジャックはぜひ用意して欲しかったところだが、PCエンジン miniでは非搭載なので、テレビのボリュームをあげて遊びたい。一方で、気軽に遊べるアクションゲームも充実している。懐かしのハドソンから出た『THE功夫』や『JJ&JEFF(TG16版カトちゃんケンちゃん)』もあるが、ナムコによる移植度の高い『源平討魔伝』『スプラッターハウス』『ワルキューレの伝説』や、NECアベニューのSG用『大魔界村』や、アイレムの『最後の忍道(NINJA SPIRIT)』や、タイトーの『パラソルスター』はいずれも素晴らしい出来なので遊んでほしい。

▲和風な芸術的世界の『源平討魔伝』。ターボパッド利用推奨。遊ばずにデモプレイを見てるだけでも面白い

▲アーケードから移植の渋い和風AVG『最後の忍道』。PCエンジンモードで難易度は抑えめに

▲筆者イチオシの隠れた名作『パラソルスター』。2人同時プレイができる

ハドソンからも『高橋名人の新冒険島(TG16版NEW ADVENTURE ISLAND)』『PC原人(1/2。2はTG16向けのBONK'S REVENGE)』『BE BALL(TG16版CHEW-MAN-FU)』などが入っている。ハドソンといえば当時半年に1度は大作RPGを出していたけれど、PCエンジン miniには『天外魔境Ⅱ』と『ニュートピアⅠ・Ⅱ』、それに『邪聖剣ネクロマンサー』しかないあたり、気軽に遊べる良質なACTやSTGが遊べるゲーム機を目指したのではと思った。

メガドラミニやミニスーファミとの比較もまた楽しい

ひとつの愉しみ方としてすでに出ているメガドライブミニやニンテンドー クラシックミニ スーパーファミコンと比べるというのがある。例えば『(スーパー)ダライアス』や『大魔界村』での同タイトルでの比較や、近いところで『ゼルダの伝説』と『ニュートピアⅠ・Ⅱ』を比較するというのもできる。例えばメガドライブミニとのダライアス対決でいえば、メガドライブ版は元の雰囲気の速度感をそのままに3画面をそのまま1画面にしたように見えるのに対し、PCエンジン版は1画面にする代わりに速度を落としてバランス調整したように見えるとか、当時のハードでどう移植したかというのが感じられて面白い。

▲メガドラミニと比べたい『スーパーダライアス』。ボスでちらつくPCエンジン版の挙動を再現している。ターボパッドが欲しいタイトルのひとつ

▲『ニュートピアII』はゼルダとの比較に

メガドライブミニにもミニスーパーファミコンにも『ストリートファイターⅡ』シリーズは収録されているので、NEC-HEから発売された『ストリートファイターⅡダッシュ』をPCエンジン miniで遊んで比較したかったところだが、残念ながらPCエンジン miniには収録されていない。NEC-HEはPCエンジン後期にソフトをリリースし続け、名作RPGの『Linda3(リンダキューブ)』『エメラルドドラゴン』『プリンセスメーカー(1・2)』をはじめさまざまなゲームタイトルをリリースしたが、それらがPCエンジン miniには1タイトルも入っていないあたり、なかなかやんごとなき事情かと思ってしまった。「ハードメーカーが出したソフトがひとつも入っていない」──これは今までに出たゲーム機のミニになかったPCエンジン miniの謎の特徴だ。PCエンジンに今も遊べる優良タイトルは数あれど、その中でもPCエンジン miniは良質なSTGやACGが揃っている。気軽に遊べるタイトルばかりでマニア以外にもお勧めできる一台だ。

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