プロセスの共有が引き出す創造性 「OPBL」が生む次世代教育 多世代“共”育の実践が生み出す、立場も肩書も超えた新たな学びの場 学びの未来は「わくわく」と「共育」にある? NEC未来創造会議とキーパーソン21の実践が示す これからの教育の姿 対話と合意形成が未来の「コモンズ」をつくる ――Z世代と実践する未来社会のプロトタイピング
現在ではなく未来を考える授業
他方で、プログラムを体験した生徒たちは現場で何を感じていたのだろうか。2050年の未来を考える「THINK & ACT2050」というコンテンツはもちろん、OPBLという新たなプラットフォームがあったからこそ、生徒にも従来の授業にはない刺激が与えられていたようだ。
「未来について話そうとするとさまざまな意見が出てくるので、対面して話さないと議論をまとめきれないと思っていたのですが、OPBLは新鮮でした。ブレインストーミングやみんなの話をまとめる作業を行いやすく、対面と同じような感覚で話せたような気がします」
名城大学附属高校一年生の林青空氏がそう言うと、札幌新陽高校一年生の河内美優氏も「オンラインとオフラインであまり差を感じなかった」と頷く。
「以前オンライン授業を受けたときはみんな喋らなくてあまりいいイメージがなかったんですが、今回はOPBLを使うことで喋りやすくなったし自分も発言できました。最初はプログラムの内容も難しくてわからなさそうだなと思っていたんですけど、一歩踏み出して人と話してみると面白いんだなとわかって嬉しかったです」
ビデオチャットツールがあるだけで授業やコミュニケーションが成立するわけではない。OPBLというツールがあるからこそ、生徒たちもこれまでと異なる姿勢で授業に臨めるのだ。事実、名城大学附属高校一年の服部花菜氏は現在開発段階にあるツールを使うことに意義を感じたと述べる。
「普段は先生方が提供してくれたツールや教材をそのまま受け入れていましたが、今回は開発中のツールということで、どうすればもっと使いやすくなるのか、どうやって使うと議論しやすくなるのか考えながら取り組んでいました。もちろん議論も楽しかったんですが、もっとこうなればいいのにと考えながらツールを使うことがすごく楽しかったんです」
他方で札幌新陽高校一年の髙橋健劉氏は、未来の考え方が変わったと語る。本プログラムは単に未来について考えさせるだけではなく、生徒たちの新たな挑戦を引き出してもいるのだろう。
「これまで自分は環境に適応していくことを考えていたんですが、今回は未来をつくる立場から議論に参加できて面白かったです。ビッグテックのような有名企業の将来について議論し、これからの社会の変化やその問題について考えることで、未来の道標ができたような気がします。個人的にも今回の授業を経てプログラミングに興味をもち、講習に通って勉強するようになりました」
2050年の未来について考えるといっても、単に技術やテック企業の知識を得るだけでは不十分だ。OPBLが“未完成”だったからこそ、生徒たちは主体的に取り組むことで未来を変えられるという実感を得られたのかもしれない。