激動の2021年にGoogleはどう動いたか、振り返ってみた

激動の2021年にGoogleはどう動いたか、振り返ってみた

激動の2021年にGoogleはどう動いたか、振り返ってみた

 2021年も新型コロナに覆われた1年でした。Googleでもすっかりリモートワークが定着。オフィス完全再開は数回延長になり、9月には「2022年の1月10日」だったのが、12月に入って「各オフィスで判断してね」に変わりました。それでも12月の時点で「米国のオフィスの90%を再開し、米国の従業員の40%近くが出勤した」そうです。Dislikeの数は表示されなくなった そんな2021年にもGoogleさんは新しいハードウェアを発売し、サービスを改善してきました。今年最後の「Googleさん」では、Googleさんのこの1年を関連記事で振り返ってみます。いいことも、残念なことも、いろいろありました。1月:Fitbit買収完了、Loon解散 例年ラスベガスで1月初旬に開催されるCESはコロナで完全デジタルになり、毎年遊園地のようなブースを出していたGoogleもオンライン参加に。そんなCESも6日の議事堂襲撃で霞んでしまいました。 この暴動を引き起こしたのはSNSでのトランプさん支持者の先鋭化で、直接のきっかけはトランプさんが同日行った「選挙は盗まれた!」演説とみられています。SNSプラットフォーム各社は次々にトランプさんのアカウントを停止し、Googleも(SNSは運営していませんが)YouTubeアカウントを停止しました。 1月にはFitbitの買収が完了しました。今年中に「Pixel Watch」が出るかも、と期待しましたが、来年になるようです。 AlphabetのLoon解散という残念なニュースもありました。無線アンテナを吊るした気球を成層圏に配備し、無線ネット網を構築するという計画でしたが、「商業的実行可能性への道が予想よりはるかに長く、リスクが高いことが証明された」ので終了です。Loonで開発した技術は別のムーンショット部門「X」の「Taara Project」の無線レーザー光通信システムに生かされています。 なお、2022年のCESはデジタルとリアルのハイブリッド開催で、Googleもリアルでの出展を予定していましたが、オミクロン株への懸念で系列のWaymoともどもリアル参加をキャンセルしました。2月:Chromebookが好調、ゲームサービスStadiaに暗雲 Canalysによる世界PC市場調査で、GoogleのChromebookの出荷台数が急増という景気のいい話がありました。アイティメディアでは紹介していませんが、2月にはIDCの2020年通年の世界PC市場調査でChrome OSがmacOSを初めて抜いたという報道もありました。2011年に発売されたときには、こんな時代が来るとは思いませんでした。IDCのアナリストは「新型コロナで学校が封鎖されたため、Chromebookの需要が急増した」と言っています。学校や教育機関による大口購入が後押ししたようです。 一方、2019年発表のゲームストリーミングサービス「Stadia」は難航しています。2月にゲームスタジオの閉鎖を発表。このサービス、米国では既に提供されていますが、1年を通してあまり話題に上っていません。10月に、AT&Tがオリジナルゲームを配信するバックエンドとしてStadiaを採用したことがニュースになり、GoogleはStadiaを消費者向けサービスからバックエンドにシフトしていることが判明しました。3月:「Nest Hub(第2世代)」発売、サードパーティCookie対策「FLoC」 2021年最初のハードウェアはスマートディスプレイの第2世代「Nest Hub(第2世代)」。現在も1万1000円で販売しています。睡眠モニター機能とめざましディスプレイがウリで、私も愛用しています。 近年、IT企業が実は個人データで大儲けしていることに気づき始めた世界の当局が規制しようと動き始めています。収益のほとんどが広告収入であるGoogleさんも、もちろんその対象。その対策の1つとして発表したのが、プライバシーサンドボックスをベースとするFLoC(Federated Learning of Cohorts、群れの連合学習)と呼ぶAPI。これなら個人のプライバシーを侵害せずに、かつ個人にとっても広告主にとっても効果的な広告を出せると謳っていますが、競合他社も当局も懐疑的で、年末の時点でまだ進展していません。 Google Play Storeの開発者の手数料値下げというニュースもありました。これも、Googleはアプリストアで儲け過ぎ、という批判対策です。GoogleはAppleと違ってサイドローディング(公式アプリ以外でのアプリダウンロード)を認めていますが、それでも批判が高まっています。 3月にはAndroidでGmailが開けなくなるという障害もありました。そういえば2020年ほどGoogleさん関連の障害は頻発しませんでしたが、この障害はWebViewが原因だったため、結構話題になりました。 世界中で検索サービスを提供するGoogleさんは、ネットワーク強化のために海底ケーブルも敷設しています。3月にはFacebookと共同で米国と東南アジアを結ぶケーブル「Echo」の計画を発表しました。2021年にはこの他、日本とシンガポールを結ぶ「Apricot」も発表しています。4月:Oracleとの10年越しのJava裁判で勝訴 2010年から続いていたOracleとの裁判がやっと終わってほっとしたのは4月のこと。この裁判は、GoogleがAndroidでJavaの著作権を侵害しているということでOracleが2010年8月にGoogleを提訴して始まりました。最高裁まで行き、「フェアユースでしょ」ということで決着。 アンディ・ルービンさんが(企業としての)Androidを2003年に立ち上げてスマートフォンを作ることにし、翌年にプログラミング言語は何にしようかと相談した際の候補はJava、JavaScript、C++の3つだったそうです。Javaの権利を持つSun Microsystemsはまだ独立企業でした。 そのSun MicrosystemsがOracleに買収されたのは2010年1月でした。5月:Googleアカウントの2段階認証がデフォルトに 5月6日にGoogleアカウントの2段階認証を“間もなく”自動登録にすると発表したという記事は、今年自分で書いた中で2番目によく読まれました。そういえばその“間もなく”がいつからだったのかは今検索しても確認できませんでした。ごめんなさい。Googleアカウントをまだ2段階認証にしていない人は、Googleのヘルプを参考に年末年始に設定してみてはいかがでしょう。 5月は恒例「Google I/O」開催の月。今年も新型コロナの影響でオンラインでの開催でした。AppleのWWDCのように演出に力を入れるでもなく、わりと淡々と主にAI関連の技術について発表しました。「Android 12」の一般向けβ公開やWear OSでのSamsungとの協力などが気になりました。 Googleの“第3のOS”「Fuchsia」(動画などでは「フューシャ」と聞こえます)がNest HubのOSになったのも5月。見た目では分からないのでユーザーにとってはあまりピンときませんが、12月にはNest Hub MaxもFuchsiaベースになるそうで、知らないうちに広まっています。 ユーザーを直撃したのは5月末のGoogleフォトの無制限無料終了です。個人的には有料でいいので、途中でサービスを打ち切ったりせずに最後まで面倒を見てほしいものです。6月:「Pixel Buds A-Series」発売、初リアル店舗オープン 廉価版のイヤフォン「Pixel Buds A-Series」の発売は6月でした。日本でも1万1900円で販売しています。廉価版といっても1万円以上。なお、ハイエンドの「Pixel Buds」は7月ごろにディスコンになった模様です。こちらは2万800円でした。ハイエンドの第2世代が出るかどうかは不明です。ただ、せっかくPixel StandでPixel Budsを無線充電しやすくしたのだから、無線充電対応ケースのハイエンドも続けてほしいものです。 そんなPixel Buds A-Seriesも手にとって見られるリアル店舗がニューヨークにオープンしたのも6月。Googleのニューヨークオフィスのビルの1階にあり、一般的なコンシューマーとあまり関わりがなさそうなGooglerたちにとってのユーザー観察の場になっているんじゃないかと思います。なので、Appleのように世界にリアル店舗を展開するつもりはなさそうです。 3月のところで「今年はあまり大きな障害がなかった」と書きましたが、最大のは6月に発生したAndroid版Googleアプリが繰り返し停止した問題でしょう。この1年で書いた中で、この記事のアクセスが最も多かったです。原因はアプリのバグだったらしく、その後のアップデートで収束しました。7月:pring買収で日本のスマホ決済に参入、コロナでも売上高は過去最高を更新 「Google Pay」はなんだかあまり使われていないなぁという感じの中、Googleが日本のモバイル決済サービスpringを買収というニュースがありました。Googleからの公式発表はなく、pringのWebサイトには「この度、pringはGoogleによる株式取得に向けた契約を締結いたしました。現時点でpringのサービスへの変更はございません。」という告知があっただけで、12月現在も淡々とサービスが続いています。鈴木淳也氏の記事にもあるとおり、2~3年後にサービス統合はあるかもしれませんが、2021年中には関連する動きはありませんでした。 7月は決算発表の月。Googleだけでなく、いわゆるGAFAの第2四半期(4~6月)はみな、増収増益でした。前年同期は既にコロナだったからもありますが、純利益が過去最高というのはすごいです。コロナ禍でYouTubeを見る人が増えたのも一因でした。8月:「Tensor」搭載次期Pixelをチラ見せ、Nestのカメラとドアホン発売 AppleもGoogleも、昔は次期フラグシップスマートフォンの情報をひた隠しにし、メディアがそれを必死に探るというのが風物詩でしたが、今年のGoogleさんは10月発売予定の「Pixel 6」の情報をかなり前から小出しにしました。8月には今年のフラグシップ「Pixel 6」シリーズの公式画像とともに、搭載するオリジナルのSoC(システムオンチップ)「Google Tensor」についても発表。 8月には、米国では以前から販売していたNestブランドのホームカメラとドアホンを日本でも発売。Androidユーザーであればいろいろ便利な機能があり、おすすめです。 そういえば「Pixel 6」に関心が集まる中、「Pixel 5a(5G)」が発売されたのも8月のことでした。既に「どんなんだったっけ」状態ですが当時もPixelシリーズの各モデルの位置付けが難しいと思ったものです。9月:Google Oneの5TBプラン追加、YouTube Music会員がようやく5000万人突破 5月のGoogleフォト無制限無料終了の際、「Google Oneのプランで2TBの上がいきなり10TBはきついよなぁ」という声が上がったのが届いたのか、月額3250円の5TBプランが新設されました。 9月には、音楽ストリーミングサービス「YouTube Music」の有料会員数が5000万人を超えました。「YouTube Music Premium」と「YouTube Premium」を合わせたもので、YouTube PremiumのユーザーはYouTube Musicはあまり使っていないかもですが、ともかく5000万人。ちなみにSpotifyの9月時点の有料会員数は1億6500万人でした。私もYouTube Musicの会員ですが、だんなのSpotify Premiumを見ていると、Spotifyの方がプレイリストや検索が便利な気がします。アルバム再生の初期設定が構成順なのは当たり前だと思っていたら、Spotifyでは11月にようやくそうなったのは記事にして初めて知りましたが。10月:Pixel 6発売、Android 12リリース、Android 12L発表 Googleさん自らの度々のリークで新鮮味はなくなっていた「Pixel 6」が発売されたのは例年通り10月のことでした。ハードウェア担当上級副社長のリック・オステルローさんがニューヨークのリアル店舗で紹介するという、GoogleにしてはちょっとAppleっぽく演出してみた発表イベントでした。 米国ではオンラインストアに予約殺到でクラッシュしたり、品不足になってクリスマスに間に合わず、お詫びに100ドル分のクレジットを提供したりするほどの人気のようです。私もPixel 6 Proをとても気に入って使っていますが、今のところ近くにユーザーは見当たりません。 スマートフォンに関心のない普通の人にPixel 6 Proの画面を見せたり、Pixel 6 Proで撮った写真を見せたりするときれいだと驚いて、たいてい「どこのスマートフォンなの?」ときかれます。「Googleの」と答えると不思議な顔をされるのが残念。 これも例年通り、同時に「Android 12」の公式版がリリースされました。Androidはもうかなり成熟してしまったのか、特に驚くような新機能はあまりないですが、自動翻訳や「レコーダー」など実用的な更新がありがたいです。 月末に発表された「Android 12L」は、2022年初頭公開予定の折りたたみ端末やタブレット向けAndroid OS。Google自身はタブレットから撤退していますが、オリジナルの折りたたみ端末を出したりするんでしょうか。Chrome OSとの兼ね合いも気になります。11月:「Pixel 6」の指紋認証と充電速度に不満、Everyday Robots立ち上げ 気に入っている「Pixel 6」ですが、Pixelシリーズ初の画面内指紋認証はちょっともっさりしています。そのことについて苦情が多かったのを受け、改善のアップデートがありました。また、充電が遅いという苦情には、12月の月例アップデートで対処したとしています。 今年はSNSのメンタルへの害についていろいろ議論になった年でした。Googleさんは幸か不幸かSNSが苦手でサービスを提供しておらず、ちょっと対岸の火事的ではありますが、YouTubeでのクリエイターと視聴者の関係はちょっとSNS的です。で、「Dislike」(親指を下に向けたアイコン)の数を表示しないことにしました。視聴する側の好みの最適化のためにこのボタンをクリック(タップ)することは引き続きできます。 Google系列の話ですが、ムーンショット部門Xからロボット部門がスピンアウトし、Everyday Robotsという企業になりました。個人的にはこれが一番好きなニュース。日常生活に溶け込むロボットの実用化はまだ先になりそうですが、生きているうちに1台欲しい。12月:Googleを去った人たちのその後、Sidewalk Labsの吸収 昨年12月にGoogleを解雇されたAI倫理研究者のティムニット・ゲブルさんが1年後、新たなAI研究所DAIRを立ち上げました。GoogleのAI部門を中心とした労使問題はまだ続いていますが、ゲブルさんには今後も活躍してほしいです。 Googleを去ったのはだいぶ昔ですが、かつてAndroid端末の発表などで活躍したヒューゴ・バーラさんが新型コロナ検査キットを手掛けるDetectのCEOに就任したのは嬉しいニュース。コンシューマーに寄り添うバーラさんの天職になりそうです。 Sidewalk Labsのダン・ドクトロフCEO(63)の辞任は残念なニュースでした。Sidewalk Labsは、都市での生活の諸問題を解決するソリューションの開発・提供を目的として2015年に立ち上げられたGoogleの系列企業です。ドクトロフさんの辞任で、企業としては解散し、Googleに吸収されます。ドクトロフさんは「残りの自生を、誰もALSで死なないようにするために捧げる」とMediumで語りました。 長くなってしまいました。これでもセキュリティ関連など、いろいろ取り落した記事もあります。2022年にはついに「Pixel Watch」(仮)登場?とか、メタバースにはどう参戦するの?とか、これからも気になるGoogleさんをウォッチしていきたいと思います。良いお年を。※この記事は、Googleの動きをゆるく追いかける連載「Googleさん」のコラムです。

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