ドコモ、代理店に「頭金0円強要」で独禁法違反か
NTTがNTTドコモの完全子会社化や同社の社長交代を発表した2020年秋のこと。ドコモが2021年3月に開始するスマホの格安の通信プラン「アハモ」の準備と並行して、ドコモショップを営む携帯販売代理店に対して独占禁止法違反が疑われる指示を出していたことが、東洋経済の取材でわかった。
スマホが突如「安く」なった舞台裏
実は2020年11月上旬ごろから各地のドコモショップで突然、最新のiPhone12(64GB)など人気のスマホ端末の一部が1台あたり1万~1.4万円ほど安くなっている。
といっても下がったのは純粋な端末価格ではない。代理店が独自に設定できるはずの「頭金」が0円になったのだ。複数の代理店関係者は「ドコモから指示されてやむをえず従ったが、納得できない」と憤る。
卸元(この場合はドコモ)が卸先の小売事業者(この場合は代理店)に対し、「いくらで販売するか」について干渉することは再販価格の拘束として独占禁止法で禁じられている。公正取引委員会の関係者は一般論と前置きしたうえで、「(卸元から代理店へ)そうした指示があった場合は、独禁法違反の可能性が高い」と話す。
一般的な頭金は、マンションなど高価な物をローンで買う際、料金の一部を先払いすることを指す。だが、携帯電話業界における頭金は意味が異なる。
代理店が携帯ショップでの販売時に、事実上の公式価格(定価)であるドコモなど携帯電話大手の直販価格(オンラインショップや直営店での販売価格)に対し、独自の基準で料金をさらに上乗せしたものを頭金と呼ぶ。この部分は割賦払いの対象とならずにその場で請求される。「店頭支払金」の略称として、この名前になっている。
携帯ショップの頭金は公式価格の料金の先払いの一部ではない。利用者が支払う総額は、頭金が多いほど公式価格よりも高くなる。そのため、頭金を「携帯ショップが儲けようと欲張り、紛らわしい言い方で客に請求する悪質な料金だ」と批判する声がある。
ドコモの内部資料によると、iPhone12(64GB)の公式価格は税別9万2160円だが、ドコモの代理店への卸値もぴったり9万2160円だ(記者撮影)だが、名称の紛らわしさは問題でも、 ショップが頭金を取ることはまったく悪いことではない(そもそも「頭金」の呼称は携帯電話大手が決めたもの)。なぜならば、ドコモを含む携帯電話大手では、公式価格と代理店への卸値を同額にしているからだ。頭金を付けずに公式価格のまま売った場合、原価率100%ということになってしまう。