アムロ・レイになって物語を進めていくAVG 『機動戦士ガンダム1 ガンダム大地に立つ』

アムロ・レイになって物語を進めていくAVG 『機動戦士ガンダム1 ガンダム大地に立つ』

ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

丈夫な厚紙のパッケージに、マニュアルやカセットテープ2巻などが入っています。収録されているのは、テレビアニメ版の1話「ガンダム大地に立つ!!」と2話「ガンダム破壊命令」の内容になります。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、ラポートより1983年10月15日に発売されたロール・ベンチャーゲーム『機動戦士ガンダム1 ガンダム大地に立つ』となります。

 1980年代前半のアドベンチャーゲームブーム時には、さまざまなタイプのタイトルが発売されました。ミステリものや脱出系、世界を救う旅など多岐にわたる中、アニメ版ストーリーをアドベンチャーゲームにしたうちの1作品が今回取り上げた『機動戦士ガンダム1 ガンダム大地に立つ』です。本作は、アニメ『機動戦士ガンダム』の第1話と第2話をテープ2巻に収録した作品で、ストーリーはアニメの1話と2話と同じです。テープ1巻目には第1話の、アムロがガンダムに乗り込んでザクを倒すまで、2巻目では宇宙空間でザクと戦うシーンに至るまでの道のりがプログラムされていました。ジャンルはロール・ベンチャーを謳っていて、マニュアルによれば「(前略)私どもラポート株式会社では、今までのアドベンチャーゲームにロールプレイングの要素を付加し、従来のゲームソフトの概念を破る画期的なゲームを開発致しました。その第1弾がこの「機動戦士ガンダム1 ガンダム大地に立つ」です。私どもでは、この本格派ゲームに対して「ロール・ベンチャー」ゲームと名付けました」と説明があります。

左のシーンではザクの飛ぶSEが、右のオープニング画面ではアニメ版オープニングが、それぞれ“カセットテープから”流れます。初めて聞いた時は、思わず感動したものです。

アムロ・レイになって物語を進めていくAVG 『機動戦士ガンダム1 ガンダム大地に立つ』

 そんな本作の目玉は、なんといってもゲーム中に劇中セリフやBGMなどが流れるということでしょう。といっても現代のように、パソコンのスピーカからアニメの台詞が聞こえてくるのではありません。ゲームをプレイしていて特定のシーンに到達すると、画面上に“Pull the cassette plug, except remote plug and hit return key.”などのメッセージが表示され、それに合わせてデータレコーダやラジカセからリモート端子以外を抜いてリターンキーを押すと、カセットテープに収録されていた音声が再生されるという仕組みでした。1巻目のテープには、サイド7に侵入してくるザクが表示されるシーンで効果音が、そしてタイトル画面で流れるオープニング主題歌「翔べ! ガンダム」1分30秒分が収録されています。2巻目には、ゲームの最後にブライトの「ガンダムの性能をあてにしすぎる。戦いはもっと有効に行うべきだ」以下のセリフが収められていました。なお、セリフや音楽再生後は“Insert the cassette plug and hit return key.”と出て、コード類を再び接続するように求められます。ただし、テープからのモニタ音が出力できるデータレコーダであれば、ケーブル類を外さなくてもスピーカからセリフなどを聞くことができますので、一連の作業は不要でした。

ゲーム中は他のアドベンチャーゲームと変わらず、動詞+名詞を入力して進めていきます。表示される説明文はすべて英語ですが、アニメを見ていれば何となく分かるかと思います。移動は、東西南北の頭文字だけでOKですが、大文字以外は受け付けません。

 ゲーム自体はオーソドックスなアドベンチャーで、プレイヤーは主人公アムロ・レイとなり物語を進めていきます。画面に“COMMAND:?”と表示されているときに、英語で動詞+名詞と入力することでコマンドが実行されました。ただし、アドベンチャーゲーム定番とも言える“LOOK”や“SEARCH”といった単語はほぼ機能しない、というのが珍しい点でしょう。

あらかじめアニメを見ていれば、“このシーンでアムロはこう行動した”や“ここではガンダムはこう動いた”というのが分かるので、あっという間に攻略出来ます。逆にアニメを見ていないと、これらの場面で非常に苦労するかもしれません。ちなみにアニメでは、左側の泣いているフラウには平手打ちをし、右のセイラが見えるシーンでは彼女をガンダムの手のひらに載せています。ゲームでも同じ行動を要求されるので、それを満たすコマンドを入力しましょう。

 そもそも本作は『機動戦士ガンダム』のアニメを視聴していることが前提となっているようで、ヒントがかなり少ないです。例えば、破壊されたドッキングベイの入口シーンでは地面に白い本らしきものが見えますが、アニメではこれがガンダムを操作するためのマニュアルということが表現されていて、アムロはそれを拾いガンダムに乗り込みました。つまり、ここでは“GET MANUAL”と入力するのが正解なのですが、アニメで予習しておかないとアイテムが“MANUAL”ということがわからないため、いきなり苦労してしまうという寸法です。ちなみに、このシーンで“LOOK”や“SEARCH”をしても、マニュアルのマの字すら出てきません(笑)。逆にアニメを見ている人なら、このシーンではマニュアルを拾うことや道中に出会う泣いているフラウ・ボウに何をすれば良いのか、さらにはガンキャノンやガンタンクをどうするのかなど、即座に分かるかと思います。

テープ1巻目、2巻目の最後は、アクションゲームとなります。どちらもザクを2機倒さなければならないので、アニメを見て行動を予習しておくことが大事になります。

 もう一つの特徴は、アクションゲームの要素も混じっていることでしょう。テープ1巻目の最後では、サイド7に侵入してきた2機のザクと戦うシーンがあるのですが、ここではコマンド1文字を入力するごとに時間が経過するため、正しいものを選ばないといけません。アニメを見ている人なら1機目のザクをビームサーベルで真っ二つに切り裂き、2機目はピンポイントでコクピットを貫く、という正しい選択を即座に選べると思います。またテープ2巻目最後には、宇宙空間でシャアザクとノーマルザク2機と戦うアクションシーンもあり、カーソルキーで照準を移動させスペースキーでビームライフルを発射するのですが、所持弾数以内に倒せないとゲームオーバーに……。

広告を見ると、先にFM-7版が発売され、その翌年にPC-88版が登場しているのがわかります。パッケージのイラストを前面に使用したバージョンは、雑誌をめくっていても目立つページでした。

 当時としては、ゲーム中にセリフやオープニングの歌が流れるということで話題になったタイトルでしたが、その性質上カセットテープ媒体を使わなければならないため、ロードに時間がかかるというのが難点だったといえます。なお、発売時よりも今の方が『機動戦士ガンダム』のアニメを見るチャンスは多くヒントも得やすいので、むしろ今こそプレイする絶好の機会かもしれません。

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