『ガンダム EXVS.2 クロスブースト』稼働半年を質問。シーズン制やマッチング調整、参戦機体の理由は?
稼働中のアーケード用アクションゲーム『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス2 クロスブースト』の開発者インタビューをお届けします。
本作は、『EXVS.』シリーズの10周年を飾るタイトル。前作『エクストリームバーサス2』からEXバーストクロスをはじめとした追加要素に加え、新規参戦機体を含め、合計200機以上のMSが登場します。
制作プロデューサーの大久保人さんとプロデューサーの中館賢さんに、ランクマッチのシーズン制を導入してみての印象やマッチング、参戦機体について、お話いただきました。
なお、インタビュー中は敬称略。
“シーズン制ランクマッチ”の反響はいかに。マッチング関連の話題も
――前回、お話いただいたのはタイトル稼働前でした。稼働から半年ほどがたちましたが、現状の評判はいかがでしょうか?
大久保:ゲーム的なところで前作『エクストリームバーサス2』と比較をすると、遊び方が変わってプレイヤーの腕前が以前よりも反映されるようになっている印象があります。
『エクストリームバーサス2』は、強い武装を押し付けるアクションが比較的多かったんです。本作『クロスブースト』では、そこに多少なりとも変更が入ったことにより、駆け引きが慎重になる場面が増えてきたかなと思います。
当然、プレイヤーによって「前作の方が好きだった」や「本作が好き」、「この機体のこの部分が気になる」などいろいろな意見があります。ただ、『クロスブースト』の遊びについては、おおむね好評と受け止めてはいます。
中館:昨今のゲームセンターの運営は、新型コロナウイルスの影響を受けてはいますが、『クロスブースト』は、熱量の高いプレイヤーのみなさまに支えていただいていると感じております。
――前作と比べて、稼働率や台数はいかがでしょうか。
中館:稼働台数は、前作『エクストリームバーサス2』と同じ規模になります。
――『クロスブースト』で始まったシーズン制の反響はいかがでしょうか?
大久保:シーズン制のランクマッチはシリーズ初の試みです。そのため、このスタイルが「いい」という人もいますし、「好みでない」という人もいます。また、新型コロナウイルスの影響もあって、想定通りにできていない部分もあるのが現状です。
プレイヤーの皆さまの反応を見つつ、今後の情勢を見ながら、いろいろと模索しつつ運営しているところになります。
中館:マッチングについては随時チェックを行っていて、直近の新しいシーズンでもなるべく近いランク帯でマッチングしやすくなる改善を行っています。引き続き、頑張っていきたいと思います。
――マッチングの調整を随時行っているとのことですが、シーズンの切り替わりや大きいアップデートのタイミングで切り替わっているのでしょうか?
大久保:オンラインでのマッチング調整は、過去作でも行っています。運営を続けていく中で、プレイヤーのランク帯、すなわち階級が上がっていきますよね。それにあわせて、人数分布は変わっていきます。マッチングの調整は、分布が変わってきた折を見て、よきタイミングで行っていました。
考え方は現在でも同じです。ただ、シーズンという区切りがありますので、ある程度はシーズンと歩調を合わせたタイミングで反映を行っています。前シーズンで行われたプレイヤーの分布に応じて、マッチングを調整していくイメージです。
――シーズン制の導入について、苦労は多かったのでしょうか?
大久保:マッチング関連はやはり苦労は多いですね。新型コロナウイルスの影響で、こちらが想定しにくい要素が非常に多くなってしまいました。そのため、“マッチングだけの苦労”というよりは、“新型コロナウイルスの状況に頭を悩まされている状況や苦労”というのが正しいと思われます。
――シーズン2から始まった公式Twitterでのプレイヤーランキング画像は好印象ですが、どのような意図で公開したのでしょうか?
大久保:プレイを続けて、頑張ってくださったプレイヤーに対してモチベーションにつながるものとして、公式側から提示できるものはないかと考えた時に、グラフィカルな形で表彰してみたらどうかなと思ったのが始まりです。保存し、記録として残せるようなものを出してあげればいいんじゃないかと思い、行った施策です。
プレイヤーからも喜んでいただけているので、やってよかったと思っています。
中館:中間発表とシーズンが終わったタイミングと段階を踏んで発表しています。途中経過も見せることでモチベーションを維持できるような流れが作れていると感じています。
“クロブフェス”はあくまで“お祭り”。新規プレイヤーを考慮したゲーム内イベント
――“即席チーム結成”(ソロ出撃で組んだチームのまま、チーム出撃するもの)ですが、反響のほどはいかがでしょうか。筆者がプレイしていても、利用されている印象を受けました。
大久保:使ってくれているプレイヤーが多いという印象です。遊んでいく中でその場でチームを組んで、ライトな形で対戦をはじめられる……間口や入り口を広げるために導入しました。遊びやすい、気軽に固定を組みやすいことを踏まえて、より多くの方に遊んでほしいという狙いが入っています。
――ゲーム内イベント“クロブフェス”について、“デュアルセレクト”や“1on1”など、いろいろな催しが行われています。これらの反響はいかがでしょうか。
大久保:“デュアルセレクト”や“1on1”については、好みによってしまう部分はあるものの、おおむね「遊んでいて楽しい」という声をいただきます。“デュアルセレクト”はそこが顕著だと思います。
階級や成績には反映されないので、不慣れな機体を選択でき、気軽に遊べる。普段とは違った遊びの感覚を味わえる、まさに“お祭り”のようなイベントです。
中館:期間限定のイベント形式で実験的なルールを導入し、プレイヤーの反応を見つつ、今後のゲームのルールをどうしていくか、という検討材料にもしています。
――“検討材料”ということは、今後、復刻や常設化される可能性はあるのでしょうか?
大久保:可能性という意味ですと“0ではない”です。ただ、すぐに常設化するかというと、そうではありません。
例えば“1on1”でしたら、機体によっては時間制限が厳しく、決着がつきにくいです。“デュアルセレクト”を戦績に関係なく遊ぶ分には楽しいとは思うのですが、突き詰めて最終的に勝ちにいくとなると、“デュアルセレクト”である以上、2機体を仕上げた人が有利になってしまうことは明確です。
そうなると、「2機体、仕上げなければいけないのか」や「好きな機体1機だけでは遊べないの?」と感じる人もやはり一定数はいて、敷居が高くなってしまいます。そのため、“デュアルセレクト”は、店内・セット貸しモードや大会モードなど、限定された環境の中で提供している機能となっています。
新しいプレイヤーが入ってくる時に、まずは1機体を使えるようになってもらうのがスタート地点です。ただ、先々は2機体を使えるようにならなければならない前提になると、はじめるのが難しいゲームというイメージがより強くなってしまいます。
操作の面では射撃、格闘など共通のシステムが多く、初心者でも動かしやすい部類のゲームではあるので、導入部分での敷居はあまり上げたくないのです。新しいプレイヤーが入ってこないとシリーズは衰退していってしまいます。そのあたりは慎重に検討していければなと思います。
新規参戦機体の基準は、原作の人気、ゲーム的な差別化、コスト帯などがかかわる
――“ジャスティスガンダム”や“オーヴェロン”など、新規参戦機体の基準をお伺いしたいです。
大久保:『エクストリームバーサス』シリーズは“オールガンダム”……さまざまな作品が参戦し、現在では200以上の機体を操作できます。
新規参戦機体についてですが、プレイヤーによって好きな機体、作品など千差万別ですので、さまざまな原作作品の機体を求められます。とはいえ、やはり最新原作アニメーションからの機体参戦を求められることが多いですね。
そのうえでどういった機体を実装するかは、いろいろな要素が関係します。原作の人気、機体のギミックとして差別化を図りやすいというゲーム的な要件、コスト帯や参戦作品などの分布などさまざまな視点から検討・選定し、版元さまへの参戦許諾伺いを進めていきます。
さらに『ガンダム』は非常に大きいIP。IP全体としての施策や、さまざまな商品が展開されています。それらの要素も検討したうえで決めていくのです。
いろいろ要望をいただくのですが、全員の要望に応えることはできません。そのため、なるべく多くの方が喜んでいただけるような機体が中心になっていくと思いつつ、驚きを混ぜつつ決めていくのがいいのかなと思っています。
――オーヴェロンは意外な機体でした。
大久保:『ガンダムエース』さんで連載されているコミック作品『機動戦士ガンダムヴァルプルギス』からの機体です。主人公の設定や“パプテマス・シロッコ”との絡みが特徴としてあります。遊びの部分でも、ゲームで動かせたらおもしろいことができると思い、参戦を決めました。
中館:オーヴェロンに関しては、チーム内でもいろいろな意見交換を行いました。実際にリリースしてみると、想像以上にプレイヤーの反応がよく、参戦するまでオーヴェロンのことを知らなかった人からも、好評をいただきました。
――新規参戦機体について、運営の想像を超えてプレイヤーが乗りこなせていることはありますか?
大久保:想定通りのこともありますし、想定を上回る使い方をされているプレイヤーもいますね。実際に参戦して、プレイ回数を重ねていく中で、テクニックの研究や技術の上達によっていろいろ使い方の幅が広がっていきますね。
――これまで新規参戦機体に3000コストが出ていないのですが、先ほどの理由が関係しているのでしょうか?
大久保:どのタイミングでどの機体を出すのか、タイトルを運営するうえで、プレイヤーの皆さんに盛り上がってもらえるタイミングなどにも留意しています。大会などのイベントや、夏休み・冬休みなどの繁忙期、学校のテスト期間なども検討要素の1つになりますし、時勢の状況によって参戦順を変更するなど開発スケジュールを調整して対応しています。あとは、先ほど申し上げたように『ガンダム』IPの全体を加味して、決めています。
それらの結果として、たまたま3000コストが参戦していない形になっているだけですね。“もし”になりますが、“新型コロナウイルスが猛威を振るっていなかったとしたら、3000コストが出ていた!”ということもあり得たかもしれませんね。
――アップデートで、アクションの追加が行われる機体がありました。以前のインタビューでは「今後やっていくかわからない、実験的な調整」とコメントされていましたが、好評のために継続しているのでしょうか?
大久保:遊びが変わったり、できることが増えたりするのもあって、好評をいただいています。ただ、アクションの追加は作業量はもちろん、かかわる人数が増えるということもあって、常日頃からできるわけではないんです。
今回は、新型コロナウイルスが多少落ち着きをみせてきている状況もあって、そこで盛り上がっていただければと、特別にアクションの追加を行っています。これまではアップデートをおこなってゲームセンターにお客さまを集めることがよしとされない風潮があり、アップデートができないために不満や要望があった中で、こちらが提供できる範囲の中で、遊びを増やそう、厚みを増やそうとして試みた施策です。
開発の負荷は増えていますが、なんとか実装しているという状況です。
――アップデートの情報公開が、以前と比べて、運営の意図が少し見られるようになった印象を受けます。こちらは、意図して変えているのでしょうか?
大久保:そのあたりは探り探りになってしまいますが、状況に合わせて対応しています。他のタイトルのようにすべての意図を書いているわけではないので、バランスを見ながらになります。
――調整の告知関連で言うと、キャラクターのグラフィックの変更について、告知がない理由は、なぜなのでしょうか?
大久保:どこまで告知を出すかというさじ加減です。「パイロットの衣装が追加されました」という内容であればわかりやすいです。ただ、グラフィックの変更は、キャラクター自体は変わっていないですし、大幅に変わるものもあれば、一部のみ代わるものもある……また、アナウンスしにくい理由があるケースもあります。
一貫して告知をすると当てはまらない部分もあるので、告知を行っていないのが現状ですね。告知内容などについては今後も模索していくと思います。
イベント“EXバトルステージ”は上級者を含めた多くのプレイヤーに好評
――有名プレイヤーが対戦する“EXバトルステージ”が配信されました。上級者は参加して腕を競える、または配信でプレイを楽しめるイベントだったと思いますが、こちらの反響はいかがでしたが?
大久保:評判はとてもよかったです。普段見る機会があまりない上級者のプレイを公開することはあまりなかったので、見ているプレイヤーからも「おもしろかった」という意見をいただきました。参加したいただいたプレイヤーも、公式の場、さらにはオフラインでの対戦はあまりできていないこともあって、喜んでいただけました。
時世もあって開催タイミングをうかがっていましたが、ようやく開催できたという感じです。我々としてもリアルなイベントをしたいと思っていたので、なんとかこぎつけられてよかったなと。
中館:先ほどの話にもあった、ランクマッチのランキング発表にも関係してくるのですが、実際にプレイしていただいている上級者にスポットを当てて、彼らのプレイを多くの人に見てもらい、他のプレイヤーが「こんな風にうまくなりたい」というモチベーションを持っていただけたならうれしいです。
そういう意味でも、先日の“EXバトルステージ”はいいイベントだったと思います。
――今後も、“EXバトルステージ”の開催はあるのでしょうか?
中館:今後も“EXバトルステージ”の開催も考えています。具体的な内容は検討中ですが、ランクマッチ上位のプレイヤーをお誘いできればと考えているので、ご期待ください。
――今年は、店舗大会の開催が厳しかったため、ランクマッチ以外に腕を競う場所を用意するのが難しかったと感じます。
中館:そうですね。今後可能であれば店舗大会などのリアルな大会を開催したいと考えています。今後の状況を見ながら、検討していきたいですね。
――運営にはプレイヤーの要望が多数寄せられていると思います。ここで答えるのは難しいものが多いと思いますが、伝えたいことはありますか?
中館:プレイヤーのみなさまのご意見には目を通して、参考にさせていただいています。直接プレイヤーの方にヒアリングするといった取り組みもおこなっています。みなさまの意見を受け止め、運営の施策、改善に努めていきます。
大久保:SNSでの意見に目を通すこともありますが、声が大きいものが正しいというわけではありません。そこは慎重に判断していきたいと考えています。
意見の吸い上げ、精査は常時やっていて、実際にゲームセンターに顔を出して様子を見ることもあります。開発メンバーが店舗で遊んで、楽しみつつ真面目にプレイして調査していることもあるんです。
――開発スタッフも足を運ばれているわけですね。ちなみに大久保さんや中館さんも店舗で遊ぶことはあるのでしょうか?
大久保:最近の状況のため、頻繁に行くのは難しいですが、たまに遊んでいます。あと出張などの際にも、近隣のゲームセンターを巡ったりしていますね。
中館:ゲームセンターで遊ぶだけでなく、PS4版『マキシブーストON』を遊ぶこともあります。
――ちなみに、どの機体を使われるのですか?
大久保:私は“クロスボーン・ガンダムX2改”をよく使います。
中館:私は金色の機体が好きなので、“百式”によく乗ります。
――昨今、さまざまなガンダムアクションゲームがありますが、本作でもっとも特徴的なところはどちらだとお考えですか?
中館:2on2対戦、原作再現などさまざまな特徴がありますが、中でも圧倒的なスピード感のあるバトルが魅力だと思っています。
――10年を超えたシリーズですが、今後、どのような方向性を目指しているなど、目標はありますか?
中館:これまでに培ってきた『EXVS.』シリーズの魅力をいかしつつ、より多くの方に『EXVS.』の楽しさに触れていただけるようにしていきたいと思っています。
――最後に読者に向けて一言お願いします。
大久保:この先の状況はわからないのですが、最近はゲームセンターに行けるような状況になりつつあると感じます。この先も、店舗に足を運んでいただき、『クロスブースト』を楽しんでいただければと思います。
また、いただいたご意見はゲームに反映させることも含めて、検討しています。「プレイヤーに、このようなことを求められている」や「こういったものが入るとよくなる」など、改善の意味を含めて、いろいろといただけると幸いです。
中館:緊急事態宣言が終わり、少しずつ状況は変わっていくと思われます。各種イベントの実施を含めて、運営に力を入れて頑張っていきますので、ご期待ください。