5Gは10Gbps時代に Qualcomm クリスティアーノ・アモンCEOが語る“次世代の5G”:MWC Barcelona 2021
2月開催予定が6月に延期され、オンラインと現地会場での併催となったMWC Barcelona 2021。そうした中、オンラインで実施された基調講演で、Qualcommの社長兼CEOのクリスティアーノ・アモン(Cristiano Amon)氏が5Gの現状と今後について語った。
Qualcommの社長兼CEOのクリスティアーノ・アモン氏アモン氏は新型コロナウイルスへの対処によって、「世界中の仕事、エンターテインメント、ヘルスケア、教育を変える」と話す。こうした変化は「パンデミック後の世界では好機でしかない」と前向きだ。企業はDXを加速し、インターネットに接続したインテリジェントなエッジデバイスは増加し続け、これは「グローバルなイノベーションの次の波で、5Gが実現する重要な役割」だと言う。
これまでも携帯電話の発展は世の中を進化させてきたが、5Gは従来よりも影響が大きいとアモン氏はみる。5Gが実現するのはより安全で効率的な輸送システム、未来の工場など、「5Gは全ての業界に影響を与える」と同氏は強調する。
実際、2021年から2025年にかけて、5Gが各国のGDPに与える影響は欧州で1兆ユーロ、米国では1.5兆ドルに達する。中国では5Gの商用化によって350万人の雇用創出につながるという。
新型コロナウイルスの流行初期だった2020年2月には、5Gを提供している事業者は50にとどまっていたが、これは2021年5月には165事業者まで拡大。さらに270の事業者が5Gの提供に向けて準備している。
急拡大する5G提供キャリア5G対応端末も拡大し、「Qualcommのソリューションを使うデバイスは1000近くになった」とアモン氏。スマートフォンだけでなく、タブレット、PC、ホームルーター、モバイルルーター、XRグラスなど、さまざまな製品が5Gに対応している。
5GのネットワークはDSS(ダイナミック・スペクトラム・シェアリング)による4G周波数帯の5G化でカバレッジを広げ、Sub-6対応で大きなデータ容量や帯域幅を確保する。ミリ波によって高速・大容量・低遅延といった機能を実現し、米国の5GのSub-6の速度の平均より16倍、LTEよりも38倍のスピードを実現したという。
5Gの周波数でカバレッジや使用するアプリケーションを使い分けることで、より効率的にネットワークを構築できるSpeedTest.netを提供するOoklaのデータより。LTEに比べて5Gは大幅に高速化し、ミリ波はさらに高速化していることが分かるキャリアにとって5Gはコスト効率も高く、データ需要の高い場所にミリ波とSub-6を導入すると、LTEに比べて35%のコスト効率化を実現できるという。「フル5Gがベストの5Gであることは明らか」とアモン氏は強調する。
世界180のキャリアが、45の国と地域で5Gミリ波に投資を行っており、2022年の冬季五輪ではChina Unicomがサービスを提供する。
各国の主要キャリアが5Gのミリ波に対応している5Gの高度化を進めるべく、2021年2月に発表したSnapdragon X65 5Gモデムが世界で初めて10Gbpsの速度を達成した。第4世代となるこのモデムは、規格を策定する3GPPのRelease 16に対応した世界初の無線アンテナだという。10Gbpsの速度を達成するために、ミリ波とSub-6のスペクトラムアグリゲーションを活用。同時に上りはSub-6で800Mbps弱というスピードも実現しており、ビデオ会議や巨大ファイルの共有などでも有効だとアピールする。
Sub-6とミリ波のスペクトラムアグリゲーションで10Gbpsを達成上りはSub-6のキャリアアグリゲーションで800Mbps近くまで高速化している「10Gbpsの5G時代がSnapdragon X65 5Gモデムで現実のものとなる」とアモン氏は期待を寄せる。搭載端末は、2021年末までに登場する見込みだという。
さらに完全仮想化ネットワークを実現するソリューションとして、スモールセル向けの第2世代の5G RANソリューション「Qualcomm FSM200プラットフォーム」を発表した。4nmプロセスを採用して電力効率が向上。サイズも前バージョン比で約半分のサイズを実現したそうだ。
通信速度は8Gbpsまでサポートして各国の周波数帯をカバー。3GPP Release 16をサポートしており、ミッションクリティカルな用途にも使える信頼性をアピールする。
FSM 200はスモールセル向けで、高速・大容量・柔軟性、そして仮想化に対応スマートフォンなどで使われるプロセッサ「Snapdragon 888」は既に130以上の端末で使われているが、これをさらに高性能化した「Snapdragon 888+ 5G Mobile Platform」も発表した。
AIがゲームプレイ、写真、ストリーミングの性能を向上させている他、CPUが最大3GHz駆動になった。AI性能は20%向上し、32TOPSに達しているという。フラグシップAndroidスマートフォンでの採用が期待できる。
CPUやAI性能を向上させた「Snapdragon 888+」現状、3GPP Release 16をカバーする製品が出始めている状況だが、同社では次期バージョンであるRelease 17を視野に入れており、例えばウェアラブルデバイスやIoT向けの「5G NR-Light」で、より低容量、低帯域のデバイスを効率的にサポートできるようになる。
ウェアラブルやIoTのような低速だが低消費電力が必要なデバイス向けのNR-Lightモバイル通信向けでは、XRヘッドセットを5Gで接続し、複数人が同時にクラウドサーバからグラフィックスをストリーミングすることが可能になり、よりリッチな体験を提供できるという。
5G搭載XRヘッドセットと5G、エッジクラウドサーバを使うことで、複数人でのVRゲームをヘッドセット単体で実現するアモン氏は火星で飛行した小型ヘリコプターの例を挙げてイノベーションの重要性を紹介しつつ、Qualcommの取り組みだけでなく、「5Gの次の10年をともに作り上げよう」と聴衆に呼びかけて講演を締めくくった。
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