日本は「使い方が分からない」が最多で50.3%…情報機器を使わない高齢者の理由(不破雷蔵) - 個人 - Yahoo!ニュース

日本は「使い方が分からない」が最多で50.3%…情報機器を使わない高齢者の理由(不破雷蔵) - 個人 - Yahoo!ニュース

「必要性を感じない」が一番

少なからぬ高齢者がファックスやパソコン、携帯電話などの情報機器を使っていない。なぜその人達は使っていないのか。主要国の実情を内閣府が2021年6月に発表した「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(※)の最新版から確認する。

今調査対象母集団では少なからぬ高齢層が情報機器(ファックスやパソコン・携帯電話そのものやそれを使ったインターネットの利用までも含む)を使っていないと回答している。

そこでその項目で「情報機器を使っていない」と回答した人に、なぜ使っていないのかを複数回答で尋ねた結果が次のグラフ。多くの国で一番多くの人が同意を示したのは「必要性を感じない」だった。ドイツでは7割台、アメリカ合衆国で5割台、日本で5割近く、スウェーデンでも3割強が同意している。ただし日本は「必要性を感じない」よりも「使い方が分からない」の方がわずかに値は高く、50.3%。日本は他国と比べると、やる気はあるけれど操作方法などが分からずに挫折している(利用したくないのではなく、利用したくともできない)人の割合が大きいようだ。

日本とスウェーデン以外では「必要性を感じない」の次に値が高いのは「使い方が分からない」。アメリカ合衆国は他国と比べて低い値にとどまっているのが印象的。学ぶ機会が充実しているのだろうか。

高齢層の情報機器普及問題について、世間一般でよく理由として想定される費用の問題「お金がかかる」は日本とアメリカ合衆国で2割強、ドイツでは1割を切っている。費用を理由にしている人は存在するが、少数意見でしかない。また同様に、高齢者の身体的な問題に関連する形で大きな理由として語られる「文字が見にくい」も1割前後。

実のところ「高齢者の情報機器離れ」の原因は、「使いたい、興味はあるが使い方が分からないので使えない」「自分の生活の中で必要性を感じない。必要のないものを使う理由がない」の2要素であることが分かる。

日本の実情を属性別に

続いて日本に限るが、属性別の動向を確認する。まずは男女別。

実のところ男女で序列に大きな違いはない。男女ともに「必要性を感じない」「使い方が分からない」がトップ2。ただし男性は「使い方が分からない」がトップで、女性は「必要性を感じない」がトップにつく。男性は意思はあるが技術が追い付かないが、女性はそもそも意思がないのが最上位となる。

その次に来るのは男性が「お金がかかる」「使い方指南者無し」「文字が見にくい」、女性は「お金がかかる」「文字が見にくい」「使い方指南者無し」。この部分でも男性は女性と比べて積極的な意思を持っていることがうかがえる。

次は年齢階層別。

「必要性を感じない」「使い方が分からない」では傾向を見出しにくいが、「購入場所・方法などが分からない」「お金がかかる」は年が上になるほど値が小さくなり、「文字が見にくい」は年が上になるに連れて値が大きくなる。現状の高齢層のうち情報機器を使っていない人においては、「購入場所・方法などが分からない」「お金がかかる」は機材の調達がかなわず、「文字が見にくい」は自分自身の身体的能力の問題であることを考えると、納得はできる動きではある。

日本は「使い方が分からない」が最多で50.3%…情報機器を使わない高齢者の理由(不破雷蔵) - 個人 - Yahoo!ニュース

一つ注意してほしいのは、今件は最初のグラフにある通り、「情報機器を使っていない人」に限定していること。情報機器非利用者は年上になるに連れて比率的に増える傾向があるため、若い年齢の人達は「必要性を少しでも感じている人は自発的に使いこなしている」にシフトしている可能性が高い。

「必要性を感じない」が、現状の日々の生活で満足しており、何か新しいことをするために努力をしたりコストを投入したりして覚える必要性を感じないのか、それとも生活にもプラスとなり存在を知れば利用に前向きとなるはずだが、その存在・利便性を知らないだけなのか。あるいは利便性を多少は認識しているが、費用対効果を考えると不必要と判断しているのか。どれかまでは分からないが、社会情勢上は高齢層への情報機器の普及が望ましい昨今において、考えさせられる結果には違いない。

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※高齢者の生活と意識に関する国際比較調査

5年毎に行われている調査で、最新分は2020年12月から2021年1月にかけて日本、アメリカ合衆国、ドイツ、スウェーデンにおいて、60歳以上の男女(老人ホームなどの施設入所者は除く)に対して調査員による個別面接聴取方式や郵送調査法、電話調査法、訪問依頼・電話聴取法によって行われたもので、有効回答数は各国とも1000件強。それぞれ男女別・年齢階層別・地域・都市規模などを元にウェイトバックが行われている。過去の調査もほぼ同様の様式で実施されている。

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