How long can you play 3D games on a small PC? Verified 10 titles on 2 models, Ryzen and Core
PCゲームは3D描画を用いるものが多く、グラフィックスの処理能力が高いビデオカード(ディスクリートGPU)を搭載したPCが求められる。そういうPCをゲーミングPCと呼ぶが、果たして本当にそんなPCが必要だろうか?【この記事に関する別の画像を見る】 CPUにはGPUの機能を内蔵しているものが多くあり、世代を経るごとにグラフィックスの処理能力も向上している。グラフィックス処理専門のGPUには及ばないにせよ、不可能ではないはずだ。 しかも一言で3Dゲームと言っても、必要とする処理能力は様々。最新世代の超美麗グラフィックスを用いる作品もあれば、かなりライトなビジュアルのものもあるし、一昔前のゲームが今でも遊ばれているものもある。実際どのくらいゲームを楽しめるかは、試してみないことには分からない。 ということで今回は、人気の小型PCを投入しているMINISFORUMの2製品を用いて、小型PCでどこまでゲームを楽しめるのかを実際にテストしてみた。検証したゲームは、新旧やジャンルを問わず、それでいて今もプレイされている10タイトルを集めてみた。 なお、小型PCの一般的な性能や内部構造、CPU温度、消費電力などについては以下の記事で検証しているので、併せてご覧いただきたい。■ ACアダプタで動作する小型PCを2機種用意 検証に使用したPCは、Core i5を搭載した「MINISFORUM EliteMini TL50」と、Ryzen 9を搭載した「MINISFORUM EliteMini HX90」。使用した各機のスペックは下記の通り。 小型PCということで、いずれもノートPC向けCPUを採用している。ディスクリートGPUは非搭載で、内蔵GPUによるグラフィックス処理となる。CPUに関しては「TL50」は4コア8スレッドのCore i5-1135G7、「HX90」は8コア16スレッドのRyzen 9 5900HXで差がある。 そのほかのスペックはストレージやメモリの量に若干の差があるが、ゲームのパフォーマンスにそれほど大きな影響を与える違いはなさそうだ。電源も出力に差があるものの、どちらもACアダプタで動作する程度の消費電力だ。 なお、TL50の試用機のメモリ容量は12GBだったが、製品版では16GBが採用されているので注意したい。また、「HX90」に関しては、ストレージが256GBしかなく、今回検証したゲームをすべてインストールには容量不足だったため、USB接続の外付けHDDも利用している(ゲームのフレームレートへの影響はほぼないと考えている)。■ ゲーム10タイトルを実際にプレイ。どこまで遊べるのか 検証に使用したゲームは下記の10タイトル。アルファベット順に紹介していく。・Age of Empires IV(エイジ オブ エンパイア 4)・Among Us(アマングアス)・Apex Legends(エーペックスレジェンズ)・Cities: Skyline(シティーズ: スカイライン)・Diablo III(ディアブロ 3)・Fortnite(フォートナイト)・Halo Infinite(ヘイロー インフィニット)・League of Legends(リーグ・オブ・レジェンズ)・Minecraft(マインクラフト)・Valorant(ヴァロラント) 各ゲームの設定は、解像度がフルHD(1,920×1,080ドット)、画質は基本的には最低を選択。ただしパフォーマンスに余裕のあるものや、画質がプレイに悪影響を及ぼすほど悪化するものは、適度に画質を上げて調整した。その上でNVIDIA FrameViewを用いて、プレイ中のフレームレートを確認した。□Age of Empires IV 定番RTSシリーズの最新作として2021年12月に発売された「Age of Empires IV」。3Dグラフィックスで描かれており、画質を上げるには相応のグラフィックス処理能力が求められる。 画質設定は、イメージクオリティを「低」にした上で、ゲームプレイ解像度スケールを66%に設定。これ以上の画質を設定すると、「システムの最小要件を満たしていない」という警告が出たため、上限ギリギリの画質に設定した。ゲームプレイは「孫子の兵法」の「初期経済」を1回プレイした。 意外にもフレームレートはかなり余裕がある状態だった。ゲーム序盤でオブジェクトが少ない状態だとは言え、これなら通常のゲームプレイにも耐えうる。警告メッセージを無視して画質を上げてもいいのかもしれないが、その場合はプレイ中にゲームがクラッシュする可能性があるとされており、悩ましいところだ。□Among Us 宇宙船に紛れ込んだ裏切者を見つけ出すオンラインマルチプレイヤーゲーム「Among Us」。今回採用した作品の中では唯一例外的に2Dグラフィックスによるゲームとなる。 本作には解像度設定のほかに画質設定はない。グラフィックス負荷は軽いことが予想されたが、2Dゲームも1つは試しておきたいという意図で採用している。ゲームプレイは通常のオンラインプレイを1回。 2Dゲームだけあって処理の重さは全く感じられず、データ上でもほぼ60fpsを維持してプレイできている。オンラインプレイにも何ら支障はないので、誰でも気軽に遊んでみていただきたい。□Apex Legends 基本プレイ無料でバトルロイヤル形式のゲームが楽しめるFPS「Apex Legends」。プレイの手軽さに加え、競技性の高さや映像の美しさでも注目され、FPSが不人気と言われる日本でも多くのプレイヤーを獲得している。 画質設定は全ての項目で最低を選択。テクスチャの解像度やエフェクトはかなり劣化するが、描画解像度は損なわれず、ゲームプレイへの影響は少ない。ゲームではチュートリアルを1周した。 平均フレームレートは60fpsに達しており、下位99%の値でも40fps程度で耐えている。プレイ中もフレームレートの低下をはっきり感じるほどの場面はない。多数のプレイヤーが戦う場面ではもう少し負荷が上がることも考えられるが、プレイ感を大きく損ねるというほどでもないだろう。とりあえず遊んでみたい程度なら試してみていいと思う。□Cities: Skyline 都市開発シミュレーションゲームの「Cities: Skyline」。発売は2015年ながら、アップデートや拡張パック、プレイヤーが制作したMODなどにより、定番タイトルとして愛されている作品だ。 画質設定は全ての項目で最も低いものを選択。陰影表現や建物のディテールは損なわれるが、ゲームプレイにさしたる支障はない(開発した都市を眺めて楽しむゲームでもあるのだが……)。今回は筆者が以前プレイし、そこそこ成長した街で数分間プレイした。 シーンによって大幅にフレームレートが変わるため評価が難しいものの、とりあえず遊ぶだけであれば特に問題はないように思う。もともと高いフレームレートを要求するゲームではないので、何ならもう少し画質を上げてもプレイには耐えられそうだ。最高画質を知っている身では、最低画質のプレイ感はやはり少々残念な気持ちになる。□Diablo III 悪魔との戦いを描くハック&スラッシュの定番「Diablo III」。発売から10年近くが経過しているが、バージョンアップや拡張パックの提供もあり、今も多くのプレイヤーを抱えている。次回作の「Diablo IV」の発売日がいつになっても決まらないから、という裏事情もあるのだが……。 本作の見た目は2Dっぽいのだが、ゲームとしては3Dグラフィックスで描かれており、細かい画質設定が可能。今回は初期設定でほぼ最高画質が選択されており、そのまま採用した。ゲームプレイは「Adventure Mode」のスタートから数分間。 平均フレームレートは目安の60fpsを大きく上回っており、快適なゲームプレイが期待できる。敵が多く激戦になった時の負荷はもう少し大きいとは思うが、それでもプレイ感は損ねないと思われるし、何なら画質を下げる手も残されている。発売当時はそれなりに高い3D描画性能を持つビデオカードが必須のゲームだっただけに、時代の流れを感じさせられる。□Fortnite オンラインで100人のバトルロイヤルが楽しめるTPS「Fortnite」。基本プレイ無料で、PCのほかにも幅広いプラットフォームに展開していることから、年齢を問わず幅広いプレイヤーに好まれている。 画質設定は、クオリティプリセットを「中」に設定。その下の「低」にすると画質が著しく低下し、ゲームプレイに支障が出ると判断した。ゲームプレイはソロのバトルロイヤルを1戦。 戦況やポジションによってフレームレートの変化が大きいものの、平均フレームレートが70fps前後と出ているのは安心感がある。下位99%では30fps程度という値も出たが、これはワーストケースに近いタイミングのもの。もちろんこの手のゲームでは、シビアな戦闘時のフレームレートの低下は許し難いものがあるし、画質も十分とは言えないため、とりあえず遊べる程度の環境と考えておくのがいいだろう。□Halo Infinite Microsoft謹製のSF・FPSシリーズ最新作「Halo Infinite」。2021年12月に発売された最新タイトルで、高画質でプレイするには相応のマシンパワーが必要になる。 画質設定は品質のプリセットで「低」を選択。なお本作には最小フレームレートと最大フレームレートという設定があり、画質をコントロールしながらフレームレートを維持できる。テストでは設定せずに試した。ゲームは「アカデミーチュートリアル」をプレイ。 Intel製CPUを搭載した「MINISFORUM EliteMini TL50」では、描画に乱れがあり、プレイ不可能な状態だったためテストを中止。AMD製CPU搭載の「MINISFORUM EliteMini HX90」では描画の乱れこそなかったが、フレームレートは平均で約16fpsとかなり低く、かろうじてゲームが成立する程度でしかない。さすがに最新ゲームは荷が重いようだ。 なお最小フレームレートを設定すると、自動的に画質を落として30fps程度でプレイ可能になる。ただし描画解像度が明らかに低下するので、どうしても遊びたい時の奥の手くらいに思っておくといいだろう。□League of Legends 5対5のチームで戦うMOBAの代表格「League of Legends」。リリースから10年以上が経過しているが、世界一プレイヤーの多いPCゲームと言われるほど高い人気を誇る。eスポーツの筆頭タイトルと見られることも多く、多額の賞金をかけた大会が世界各地で開かれている。 画質設定は初期設定で最高画質になっていたため、そのまま使用した。ゲームプレイはチュートリアルの1番目「LoLへようこそ」をプレイ。 古い作品であり、また広くプレイしてもらいたいeスポーツ向けタイトルであることもあって、平均フレームレートは200fpsを超えた。実際の動作も軽快だ。キャラクターが多い場面でも描画の引っかかりを感じることは全くなく、プレイ環境として何の問題もない。現役のPCゲームにも動作が軽い作品はあるという好例だ。□Minecraft 世界一売れたゲームとしても知られるサンドボックスゲーム「Minecraft」。カクカクしたブロックで表現される世界は、3Dゲームではあるが処理負荷は軽めで、多くの人が気軽にプレイできるのも魅力。 描画設定は特に下げず標準のままとし、表示距離(遠方の表示範囲)は40チャンクとした。10チャンク程度の表示でも特に問題なくプレイできるので、本作のプレイ環境としては申し分ない設定だ。ゲームは適当なワールドを新たに作成して数分間プレイした。 平均フレームレートは約60fpsで、かなり快適なプレイ環境と言える。オブジェクトが増えれば重くなっていく可能性はあるが、その際には表示距離を下げてやれば改善されると思われる。□Valorant 特徴的な能力を持つキャラクター達によるチーム対戦で、競技性の高さを打ち出したFPS「Valorant」。基本プレイ無料であることに加え、競技性を優先してかフレームレートが比較的高く維持されるのが特徴。60Hzを超える高リフレッシュレートでのゲームプレイも好まれている。 画質設定は可能な限り最低を選択。影の表現などが省略されて少しあっさりしたビジュアルになるが、ほかのゲームに比べれば画質の低下は少ない。逆に言うと最高画質にしてもさほど美麗な映像になるわけでもない。検証では「プラクティスモード」で「スパイクの設置」を1回プレイした。 フレームレートは予想以上に高く、高リフレッシュレートディスプレイを導入しても十分に力を発揮できる。プレイ感も何ら違和感なく快適そのものだ。例えディスクリートGPUがない環境でも遠慮なく遊んでいい作品と言える。■ 最新ビッグタイトルでなければ、小型PCでも3Dゲームはやりようがある 全10タイトルを見てきて最も興味深かったのは、FPSやTPSといったアクション性の高い3Dゲームでも、作品によって相当な違いがあるということだ。 「Valorant」は完璧に動作するし、「Fortnite」や「Apex Legends」も画質さえ下げればそれなりに遊べる。基本プレイ無料で多くの人に遊んでほしいというゲームなので、ある程度は低い性能のPCでも動作するとは思っていたが、その中でも作品ごとの差は大きい。 そして予想通りではあるが、「Halo Infinite」のような最新のビッグタイトルは画質を下げても厳しい。こういったゲームを満足にプレイするには、やはりCPU内蔵グラフィックスではなくディスクリートGPUが必要になると思っておく方がいい。 もっとも、そういったタイトルでも発売から何年か経てば、CPUと内蔵グラフィックスの進化とともに現実的なプレイ環境に近づいていくだろう。「Cities: Skylines」や「Diablo III」など、発売当時はそれなりのゲーミングPCが欲しかったゲームも、今ではそこそこに遊べてしまうのがいい例だ。 特に最近はゲーム開発の大規模化でシリーズ作品の最新作がなかなか出なかったり、オンライン対応によってアップデートや拡張パックによる長寿命化を図る作品も増えている。発売から数年経ってもまだまだ最前線にいる人気作品も少なくない。 「以前遊び損ねたゲームが気になるものの、今はゲーミングPCを持っていないし……」とあきらめずに、どれくらいのパフォーマンスが出せるか、本稿のような検証記事でチェックしていくのもいいだろう。筆者も機を見て、CPU内蔵グラフィックスのゲーミングパフォーマンスはチェックし続けていきたい。
PC Watch,石田 賀津男