学校教育のデジタル活用は道半ば 本当の課題は「教師のスキル不足」ではない
小中学生の子どもたち一人ひとりに情報端末(ノートPC、タブレット)はほぼ行き渡った。
やっと日本の教育が大きく変わるかもしれない。そう期待する人も多い。
そう楽観視できるだろうか?本稿では、直近の状況、変化の有無を観察した上で、今後に向けた課題を整理する。
■96%の自治体で端末整備完了、残り4%は一部端末のみ
<8/30に公表された文科省の最新の調査(速報値)によると、96.1%の自治体で端末を整備済みで、残りの70市町村等はまだこれからだ(図)。
公立小中学校等における端末の整備状況(本年7月時点)
公立高校については、都道府県ごとに整備状況の差が大きいし、公費負担なのか、保護者負担なのかも分かれている(図)。整備率も保護者負担もこんなに違うのは不公平なのでは、という意見もあると思うし、重要な問題だが、本稿では指摘にとどめる。
公立高校における端末の整備見込み(見込み整備台数÷生徒数、本年8月現在)
■利活用は進んでいるのか?
利活用はどの程度進んでいるのだろうか。
などが進むことが期待される。
(※注)「オンライン授業」と言っても、さまざまなものが含まれるときがあるが、ここでは、ウェブ会議などを介した双方向性のある授業を想定する。
学校間の差、地域(教育委員会)ごとの差が大きくなっている。
文科省の調査では利活用の実態はよくつかめない。小学校段階では84.2%が全学年で利活用を開始しており、11.9%が一部の学年で利活用を開始、3.9%が利活用を開始していないとの調査結果が載っている。中学校では、91.0%が全学年で利活用を開始、5.5%が一部の学年で利活用を開始、3.5%が利活用を開始していない(以上、前掲の文科省資料)。
コロナ危機下のこんにちでも自宅からつないでオンライン授業等を実施する練習もできていない学校もまだまだ多い。ネット環境のない家庭にはポケットWi-Fiを貸し出している自治体などもあるが、そこまでできていない自治体もある。
■問題は本当に教師のスキル不足なのか?
教師のICTスキルは大きな課題のひとつと教育委員会、文科省に認識されているようだ。
自治体におけるGIGAスクール構想に関連する課題
図
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スキルアップする余力を生む時間というリソースを確保する策こそ必要だ。具体的には、教員数の確保、増員、ICT支援員やサポートスタッフの増員などだ。
■日々の授業がしっかり準備できない
とにかく忙し過ぎて、新しいものは置いておきたい(取り入れたくない)」、「これまで通りでいけるうちは、これまで通りで進めておきたい」と思っている先生たちもいることだ。それほど、先生たちは日々大変だし、考える気力、余力がなくなるほど疲れている(そういう人ばかりと申し上げているわけではないが)。
日々の授業をしっかり準備できる余力がないという問題だ。これは、児童生徒一人一台端末が整備される前からも問題だったし、デジタル技術が授業等でまだまだ活用されない教室がある背景のひとつともなっている。
■「学校」「教育委員会」単位での改善の余地はある
先生たちがICTを使って多少でもラクになったという状態にもっていくことが先決だ。
■「忙しい」を言い訳にし続けないために
なにもかも、「忙しい」ばかりを言い訳にできない、という点も指摘しておきたい。
子どもたち本位で何を優先度高く取り組む必要があるのか、何は効率化、改善していけるのか、各学校、教育委員会で改めて見つめなおす必要がある。
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】
(参考)
佐藤学『第四次産業革命と教育の未来』
妹尾昌俊『教師と学校の失敗学:なぜ変化に対応できないのか』
妹尾昌俊『教師崩壊』
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★妹尾の記事一覧
https://news.yahoo.co.jp/byline/senoomasatoshi